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スタンダード分析・第1回:枯葉 (Autumn Leaves)

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このブログで定期的に楽曲分析(アナリーゼ)をしてみたいと思います。今後色々な曲を「スタンダード分析」というカテゴリーに入れていく予定です。

第1回はジャズ初心者の課題曲として取り上げられることが多い「枯葉」(Autumn Leaves)を観察・分析してみます。セッションでも定番曲の一つです。

このブログでの楽曲分析は「お行儀良く弾く」ために「どんな音を弾いて良いか・弾いてはいけないか」を学ぶためではなく、ソングをよく観察することで「どんな音使いが可能か」を考え、「これまでの自分自身」を解放し、より広い可能性に目覚めるために行います。

早速ハーモニーを見ていきます。このオータム・リーヴス(原曲名はLes Feuilles Mortes)という曲は多くの場合、こういう姿をしていると思います。キーはGmで演奏されることが多いでしょう。平行調は勿論Bbです。フラットが2つの調。

Autumn Leaves

何と言っても特徴的なのが、この曲はほぼ「メジャーのツーファイブ」と「マイナーのツーファイブ」の交代で成立しているという点です。Cm7-F7-BbΔ7がメジャー・ツーファイブ。Aø7-D7-Gm7がマイナー・ツーファイブ(注:Aø7は「Aハーフディミニッシュ」と読み、Am7(b5)と同じ意味です)。

そのためこの曲は「IIm7 – V7 – I」というコード進行をマスターするために都合の良い、初心者に適した曲であるとよく言われます。確かに、メジャーとマイナーのツーファイブをきちんと弾き分けられるのは大事な基本スキルです。

メジャーとマイナーのツーファイブの大きい違いは、主にマイナーの場合V7の箇所で「Hmp5↓」(ハーモニック・マイナー・パーフェクト・フィフス・ビロウまたはHP5・エイチピーファイブとも呼ばれる)というスケールがよく使われることです(古典的には)。

Hmp5↓は「解決先コードのルートからはじまるハーモニック・マイナー」と考えても良いし、V7のトライアドに半音上のトライアドが結合したものと考えても構いません。

メジャー・マイナーどちらのツーファイブのV7上でもオルタード・ミクソリディアン・シンメトリック系のスケールは共通して使用可能。というわけでツーファイブの勉強に適した曲であるのは間違いありません。

しかしそのようにこの曲を練習したことのある方のほとんどは、ある時こう思ったのではないでしょうか。「この曲はツーファイブのフレーズをたくさん覚えて当てはめていっても美しくならない!」と。ここから「本当の表現」が始まると思います(が、それはまた別の話)。

曲をもう少し詳しく見ていきます。4小節目のEbΔ7ですが、これはきっちり弾いても良いし、前の小節のBbΔ7のまま大きく考えても良いはず。またトニックのGm6の6th(E音)はこの曲の特徴音とも言えるので、自分がこれをどう扱いたいかをよく考える。Cm7にとってはM3の音であり、Gm6をGm7と考えると実音F-E-Ebというきれいな半音下降ラインが出てきたりもします。

このGm6はBセクション(サビ)の4小節目ではG7として弾かれることも多いですね。次のCm7への移動をよりドラマチックにするためのアレンジ(セカンダリー・ドミナント化)。ただこれは自分以外の人がGmでやっているのか、G7でやっているのかをよく聴きながらプレイする必要あり。

Cセクションの3〜4小節目の「Gm7-Gb7-Fm7-E7」は「よくある」ターンアラウンド。元々「Gm7-C7-Fm7-Bb7」という「2つの小さいツーファイブ」があり、その中のC7とBb7がそれぞれ増4度関係のコード(=裏コードまたはトライトーン・サブと呼ぶ)で代用されたと考えることができます。

と頭でわかってもこのターンアラウンドをどう弾くか、というのは初心者にとって最初の壁となるものでしょう。勿論「2拍づつコードに従って弾く」のもあり。この2小節ターンアラウンドのクリシェ的な表現はバップ時代にたくさん存在するので過去の巨人の演奏を参考にするのが良いと思います。

ただ「2拍づつコードに従って弾く」のはある速度域を超えると「いちいち考えていられない」ということになるので、「一発」で通し大きく歌うのも有効。Gm一発、マイナー・ペンタ、ブルース・スケール等々。また1小節目はC7のE音を、2小節目はBb7のD音をターゲットとして強調するのもよくある手。

こういうターンアラウンドを最初きちんと弾けなくとも、いずれ”Oleo”のような「循環」と呼ばれる曲に取り組むようになると余裕を持って弾けるようになってくるはず。ターンアラウンドは色々な工夫と実験が可能な楽しい場所なので、苦手意識を持たず楽しんでみるのが良いと思います。

ところでこの「Gm7-C7-Fm7-Bb7」が「Gm7-Gb7-Fm7-E7」となっているのは、サビ5小節目のEb7に向けて半音下降していくというシナリオがあるから。きれいな部分ですね。そしてこのEb7はEbΔ7として弾くのも可。Eb7の場合はブルージー。Lydian b7thもwhy not? でしょう。気持ちの入る部分だと感じます。

そしてこのEb7というのはAm7(b5)から見て増4度関係。この「Eb7-D7-Gm6」は「Aø7-D7-Gm」と考えてフレージングしても違和感はないでしょう。

と、ここまでわりと丁寧に観察してみてあらためて思ったのですが、これは果たして「初心者向けの曲」と言えるのでしょうか。

確かに「初心者にとって勉強になる曲」ではあると思います。しかしこの曲で説得力のある演奏をするには相当な力量が必要になるはず。というのも前述のように「伝統的なツーファイブを学び・自分ものとし・あてはめる」的な演奏ではこの曲はほとんど音楽にならないからです。

じゃあどう弾けばいいんだという話ですが、それについては先日従う・対峙する・突き進むという記事を書いたので興味ある方はご一読下さい。

この単純な構造の「枯葉」は、どう弾けば美しくなるのか。ブルースにも言えることだと思いますが、この曲は「お前はどんなふうに、何を弾きたいんだ?」と問いかけてくる貴重な曲でもあると思います。アップテンポのDonna Leeとミディアム・テンポのAutumn Leaves、果たしてどちらが難しいでしょうか!?

参考音源ですが、この曲、現代のギタリストによる演奏はそれほど多くありません。Jim Hallによる演奏は勿論有名。Kenny Burrellのラテンっぽい演奏もあります。Julian Lageのソロも良いです(但し別次元すぎてあまり参考にならないかも)。

あとこの曲の最も有名な録音はMiles Davis “Somethin’ Else”収録のテイクですがその中のCannonball Adderleyは音楽神に憑依された巫女状態なので未聴の方は是非(以下、ソロの部分から再生します)。学生の頃に苦労して音を拾った思い出があります。

この曲は高速で演奏しても面白いし、ゆったりした速度で16分音符中心のフレージングをするのも面白いです。ハーモニー的にも単純なのでいくらでも複雑なリハモを施すこともできます。

と、ここまではハーモニーのことだけを見てきました。長文なのにメロディのことについては一言も書けず。それは別の機会に譲りたいと思いますが、「ソロで行き詰った」ら、メロディをよく観察するのがやはりいちばん良いと思います。演奏するために必要な素材は「メロディとコード進行の中に全て最初から存在している」と言って良いくらいだと私は思います。

なおセッションでこの曲を演奏する場合、バレルやマイルスがやっている有名なイントロをエンディングに使用することもあります。またサビの「Aø7-D7-Gm7」ではベースをずっとD音で弾く「ドミナント・ペダル」という手法も「盛り上げる」ためによく使われますね。

最後に脱線ですが、「アナリーゼ」というのはドイツ語ですが「楽曲分析」という意味で普通に使われる用語なので覚えておくと便利です。


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