あるコード進行との関係で、フレーズはどのように弾かれてきたのか。フレーズをどのように弾くことができるのか。
どんなふうにも弾けるだろ! と言われると話が終わってしまうのですが、私にとって「考える」ことは「練習」の一環なのであらためて真面目に考えてみると、大きく分けて3種類の発想、またはアプローチが存在するのではないかと思います。少なくとも。
その3つを私なりに言葉にしてみると、「従う・対峙する・突き進む」という表現がしっくり来ます。
「従う」とはコード進行内の個々のコードに文字通り従い、そのコードを表現するようなフレーズを弾くこと。コード・トーンや、テンションを含んだアルペジオを、経過音やクロマチック・アプローチを使って紡いでいく。最も基本的な表現。スクールで教えられることも多い表現。ビバップの基本的な語法。
「対峙する」というのは、オリジナルのコード進行に対して少し違う進行を設定し、その進行に従うこと。ドミナント・コードのトライトーン・サブ(裏コード)を使ったり、もっと過激な設定(リハモ)をしてもいい。バップでもこの方法は普通にあり、ギターではバップとはちょっと違うけれどやはりウェスをまず思い浮かべます。
「突き進む」というのは、一つ一つのコードに対して何かを弾いていくというより、ある一つのアイデアで「コード進行の中を突き進む・突き抜ける」ようなイメージ。モチーフやコモントーンを活用し、時に小節線を忘れて「突き進む」かのようなプレイは上の2つと少し異質なアプローチという感じがします。
これは結果的にコードに対して全てインサイドな音で終わることもあるし、少し外れることもある。外れた音があってもモチーフが一貫していたり、強力な駆動力が存在していれば、リスナーの耳はその表現を自然な(そしてエキサイティングな)ものとしてアクセプトする。
この「突き進む」という演奏で私がいま思い浮かべたのはジム・ホールとパット・メセニーです。メセニーの場合は着地をドラマチックにするために不思議な経路を辿る「対峙」と、その経路を辿る際の「突き進む」が渾然一体となっている感じもします。
下はジム・ホールによる有名な “Autumn Leaves” の演奏です。ソロの部分(0:47付近)から開始します。この演奏は「突き進む」のわかりやすい例ではないかと思います。音の選択は結果的にはインサイドですが、「付点4分音符と2分音符」という強力なリズムのモチーフが、「その時その時で何か考え、やって、終わりにする」のではなく、前へ前へと音楽を推進させているように聴こえます。
このアプローチの良い点は、ジャズ・スクールでよく習う感じの「伝統的なフレーズや言い回し」をたくさん「暗記」せずとも、「表現したい」という欲求とセンスがある人なら個性的かつリッチな表現を獲得できることでしょう。
とはいえ「伝統的なフレーズ」(例えば「従う・対峙する」系のフレーズ)を多く練習することによって、耳も指も自分が欲する音を理解し、それを指板上で探りやすくなるので、「突き進む系」のプレイを目指す人にとってもそれは有意義な練習と言っていいと思います。
下はパット・メセニーによる “Third Wind” のソロ部分です。これは「対峙する」と「突き進む」のハイブリッド型に近い感じでしょうか。オリジナルの和声とは何か違うものを設定し、特徴的なシェイプ(=音の上下行が描く軌跡)を駆動力とすることによって「和声の波をかいくぐる」ような演奏に私には聴こえます。
勿論最初からこんなふうに弾ける人は(多分)いないはずで、普通の学習としてはやはり「コードをきっちり弾き分ける」「裏コードをはじめとした代理コードを応用する」「大胆なリハモ・スーパーインポーズを施す」「トーナリティーを大きく感じで弾く」という順番は間違ってはいないのかもしれません。
そして最後は「それらの武器全てを駆使して、生き延びる」ということなのでしょう。この記事で私が言いたかったのは、やっぱりジャズって最高だぜ! ということです。