音と色彩感覚が結びつく「共感覚」はよくある現象らしく、ロシアの作曲家アレクサンドル・スクリャービン、フランスの作曲家オリヴィエ・メシアンは強い共感覚の持ち主だったとして有名らしいです。特にメシアンの色彩感覚は、常軌を逸するような細かさで驚かされます(下の動画、0:49〜)。
私は凡人なのでここまで細かくはないのですが、#11thの音が暖色系(オレンジっぽい色)、b13thの色が冷たくて暗い水色(藍色)というマッピングが頭の中にできてしまいました。不思議なことにb13thと#5thは違う色で、後者は濃いオレンジ色を想起してしまいます(b13はテンションで#5は7thコードの基礎音の一部なので違って当然ではありますが…)。
ところで「味覚」についてはどうでしょうか。特定の音のタイプと「味」の結びつきについて語っている人は、私の狭い知識では知らないのですが(ご存知の方、教えていただけると幸いです)これもあっても全くおかしくないと思います。
例えばチョコレートケーキ。あれは、私にとってはルートと完全5度が強烈な、重厚な、ドーンとした味わい。ちょっといいチョコレートケーキだと、そこに完全4度も加わる。オレンジ味が少し混じっていたりすると、b7thが入っている感じ。スケールで言うと、ミクソリディアンが近いイメージ。もちろん、これは私の私的な感覚で、個々人によって違ってあたり前、違ったほうが面白いはず。
不思議なのが、タイ料理です。たとえば下は「ヤムママー」というタイの屋台料理。インスタントラーメンにレタスやひき肉やボイルしたエビや様々なハーブが入っていて、ナンプラーの醤油っぽい味もあれば柑橘系の酸っぱさもあり、辛さも砂糖の甘さもある、なんとも不思議な味です。
なんというか、機能がよくわからないコードのようです。例えるなら分数コード、複合トライアドのようです。D on Cのようなリディアン、F# on Cのようなコンディミっぽい組み合わせとか(リディアン系の印象が強い…)。
複雑なら良いというわけでもなく、もっとシンプルな、たとえば鶏の胸肉を、ざく切りにした生姜と塩を少々入れて沸騰させただけの料理などは、識別できる食材は3つしかなくても、とっても深みがあっておいしい。とはいえ、タイ料理やインド料理のようなスパイスの多い料理を食べている時、どれだけの数の食材を識別できるか、それをどう感じるかというのも自分の感受性と向き合う意味では良い経験ではないか。
チョコレートケーキやチョコレートブラウニーも、おいしいのですが、そればかりだと感覚が鈍るような気がしないでもありません。音楽以外の生活で何をどんなふうに感じているかは、やはり最終的に自分の音楽に影響してくるように感じています。