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「コール・アンド・レスポンス」をイメージし、フレーズに説得力を持たせる

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コール・アンド・レスポンス (Call and Response) という表現形式(または方法論)があります。ブルースで有名なアプローチですが、最初の人が発したフレーズ(≒言葉、メッセージ)に対して、別の人が違ったフレーズで応答したり、その続きを言う、という形式です。

誰かが何かを言った後、私達はそれに相槌を打ったり、質問したり、補足したり、反論したりします(沈黙・無視することもある。それも立派な表現)。それを音楽的にやるわけです。

このコール・アンド・レスポンスは元々アフリカのサハラ以南の文化だったようです。その起源には諸説あるようですが、人々はこの「呼びかけと応答」を社会生活で普通に使っていたようです (Wikipedia)。例えば

「これから集会があるよ〜 集会に行こう〜」
「集会は楽しい〜 みんな集会に行こう〜」

とか

「あっちのほうに〜 水が湧いてた〜」
「みんな行こう〜 水が水が 湧いている〜」

とか、そんな風に歌っていたらしい(ちなみに「水が湧いている〜」という例はエミリー・レムラーが教則DVDで説明していたもの)。当時は電話もメールもLINEもTwitterもなかったし、広大なサハラ砂漠では「歌」でこうして意思疎通するのが合理的でもあったのでしょう。

この形式は歌以外にも楽器演奏でも見られ、やがて彼等が不遇にも黒人奴隷としてアメリカ大陸に連れて来られて以来、コール・アンド・レスポンスはブルーズ・ミュージックの構造的な基礎となったわけです(和声的にはヨーロッパ音楽の和声が奇妙な形で借用された)。ロバート・ジョンソンの有名な曲に、

「おいらは〜 交差点に行ったのさ〜」
「おいらは〜 がっくし跪いたさ〜」

という有名な曲がありますが、これはコール・アンド・レスポンス形式でストーリーを語っている感じです。いわば「ひとりコール・アンド・レスポンス」。質問に対して回答するというより、物語を展開しているという感じです。

ロックですがレッド・ツェッペリンの “Black Dog” もコール・アンド・レスポンス形式で有名です。ロバート・プラントの歌とバンド演奏が交互に発生する冒頭の部分。あれは完全にコール・アンド・レスポンス(そういえばツェッペリンはああ見えて非常にブルーズ色の強いバンドでした)。

ジャズ・ギターにおけるコール・アンド・レスポンスの例として私が最初に思い浮かべるのはパット・メセニーの “Question and Answer” というワルツです。テーマ部は8小節単位でコール・アンド・レスポンスをしているように聴こえます。「問いと答え」という曲名はコール・アンド・レスポンスと同義でしょう。

ソロになるとより小さい単位でコール・アンド・レスポンス、問いと答えを繰り返している感じです。まさに「ひとりコール・アンド・レスポンス」。メセニーが何かブツブツと自分自身に問いかけ、それに自分で答えていく。それがやがて一つのストーリーになる。私にはそんな感じに聞こえてくる演奏です。

ジャズ・ブルースでも「コール・アンド・レスポンスの手法」を取り入れない理由はないわけで、またブルース以外に適用してもフレージングに良い結果をもたらしてくれるように感じます。フォーバース、エイトバースは言わずもがなですね。これはいつも意識していると良いことがあると思うのです。

モチーフ展開法の一つと言えますが、この方面を普段から鍛えるために、例えば以下のように普段から 居酒屋で独り酒を飲みながら問わず語りをする のも 演奏能力向上のための素晴らしい訓練 になると思います。

「今日はたくさん 働いた〜」「辛かった〜 頑張った〜」
「エクセルはもう まっぴらだ〜」「まっぴらだ〜 Oh no〜」
「働いても 働いても〜」「昇給しない〜 昇進しない〜」
「新しいギターを 買ったらよ〜」「嫁さんに怒られた〜」
「嫁のバッグは 10個ある〜」「俺のギターは 1本だけ〜」

等々、ビールやホッピーを片手に哀愁漂うフレーズを脳内で唱えます。実践時はブルース等の演奏時に思い出してその雰囲気でフレージングしてみます。これ、個人的にはかなりイケている方法で、フレーズのアイデアが湧きます。

なお伝統的なブルースでは最初の4小節と次の4小節が両方とも質問で(同じことを2度反復することで、表現がパワフルになるんだと思います)、最後の4小説が答え、ということが多いようですが、これは好きにしていいでしょう。2小節単位でやったり、1小節のコールに対して3小節でレスポンスするのも面白いはず。

「俺は毎日ギターを練習する〜」
「俺は毎日ギターを練習する〜 Oh yeah〜」
「毎日練習してんだから、きっとうまくなるはずさ〜 Maybe yeah〜」

などと皆さんも是非やってみてはどうでしょうか。演奏に絶対説得力が出てくると思います(物事が思い通りに行かず苦労している自分の気持ちをぶつけると絶対に説得力が出るはずだ!)。これは私のお気に入りの練習法です。理詰めの練習をしすぎて頭が固くなった時などにとても効果的です。

上のメセニーの “Question and Answer” は給料が少ないとかギター買ったら怒られたとかお嫁さんのバッグはいいのか、とかとちょっと違う、もう少し抽象度の高い問わず語りのように聴こえますが、それはあまり気にしないようにしましょう(汗)悩み事は人によって違いますから!


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