カナダ・ヌナブト準州(カナダの右上のグリーンランド寄りのほう)の若い女性2人が「喉歌」を歌っている様子です。この「喉歌」はアルタイ山脈からモンゴル、北極圏のイヌイット、そして日本のアイヌの人々のあいだにも伝わる歌唱法で、喉で基音と同時に倍音も出すスーパーテクニックなのですが、この2人の歌がすごい。テクノです。ボイパです。ミニマルです。ライヒです。
歴史を考えるとボイスパーカッションやテクノよりも起源が古いのは間違いなく(数百年以上の歴史があるはず)、この原始のグルーヴに強く心が惹かれます。3連符のシャッフルっぽいリズムがあるのも面白い。
下の動画では同じ2人による、さらに多くのバリエーションを楽しめます。そして彼らは我々日本人と同じモンゴロイドであるため、妙な親近感を覚えます。あと女性が女性性を強調せず、野太い男性的な声を出すのも興味深い。
この「喉歌」は日本国のアイヌの人々にも「レクㇷカラ」(喉遊び歌)として伝わっています。もうなんか他人事とは思えません。北海道と沖縄には縄文人の血を引く人たちが多く残っており、中央アジアからやってきたある集団が縄文人となったり、ベーリング海峡を渡ってイヌイットとなったり、北米に移動してインディアンとなったなどと言われています。
アメリカのネイティヴ・アメリカン保護区域のグローサリーに寄ったら、出てきたお店の人が日本人のような顔をしていて、俺たち祖先がきっと近いのかもしれないな、と思いました。でも調べた限り、アメリカのインディアンによる「喉歌」の動画は見つけられませんでした。これはモンゴル以北の寒い北の地域で発達した音楽表現なのかな。
ところでこの「喉歌」(英語ではThroat singing)は、YouTubeで検索すると再生回数が多くて評価が高いものが山ほど出てくるのですが、私はあまり好きになれないバージョンが多いです。私が違和感を覚えるのは、かなり商業的なアレンジになっていて、西洋的価値観にのせたようなもの。そういうのは全く感動しません。
そういう西洋化されていない「喉歌」でいちばん好きなバージョンが、これです。以前もこのブログで紹介したことがあるのですが、これを超える喉歌の動画には出会っていません。この2人はトゥヴァ共和国(モンゴルの上にある国)の人たちらしいです。
こういうスタティック(静的な)ハーモニーの音楽、どこかに強く移動する和声ではない音楽は聴いていると独特の気持ち良さがあります。モーダルな音楽と言っても良いのかな。さらにはミニマルな音楽。しかもピッチが人工的に整えられた楽器を使っていないところ。この兄妹みたいにジャズをやれないかな、と思っています。気持ちの深いところでは。