アドリブする時に使用可能な音は何だろう、と考える時、まずコードトーンというのがあると思います。例えば「Am7」というコードの上であれば、A, C, E, Gという4つの音。アルペジオと呼んでも良いでしょうし、こういう考え方を「コーダル」と呼んでも良いと思います。
これは音数も少ないし、間違った音を弾く心配もなく、悩まなくていいので、入門段階ではやりやすいアプローチだと思います。それにクロマチック音で上手に修飾すればコードトーンだけでもかなり高度な表現もできたりします。難しい理論を知らなくても、すぐにジャズのアドリブに取りかかれる。
それに対してAmというコードの上で、Aドリアンを弾く、Aエオリアンを弾く、Bmペンタを弾く、はたまたAディミニッシュ・スケールを弾く…という考え方があるとします。スケールを中心に考えるアプローチ。スケーラーと呼んでも、モーダルと呼んでも良いかもしれません。これは少し表現の幅が広がるものの、やや精密な理論の理解が必要になってきます。
表現としてはどちらにもそれぞれの特色があって、それぞれ重要で、コーダルな練習・モーダルな練習、どちらも最低限は必要なのだろうとは思います。そしてやっているうちにやがて自然に両者が自分の中でブレンドしてきて、特にどちらで考えてやっているわけでもない、という状態に近付いていくのはないかと思います。
コーダルでも、モーダルでもなく…トライアディック
さて、とある秘密の場所でラーゲ・ルンドのこのミニ動画を教えていただきました(笑)。ここで彼は、僕はスケールでは考えないよ、と言っています。
僕はハーモニーをシンプルに考えている。あんまりスケールで考えることはないんだ。スケールは…知っているのは良いと思うけど、具体的(specific)な感じがしないんだよね。僕は様々なトライアドで考えるんだ。
つまり「コーダルかモーダルか」以外に「トライアディック」というもうひとつのアプローチがあると想定しても良いのでしょう。
例えば2つのトライアドを組み合わせるとすると、既に6つの音があるんですよね。6音というのは、7音からなるダイアトニック・スケールから見て1音足りないだけで、ほぼスケールに近い密集度がある。なおかつトライアドという強烈なサウンドの組み合わせで、カラフルな表現ができる。
ラーゲ・ルンドにとってはそういうトライアドのカップリング(組み合わせ)によるラインのほうが”Specific”(具体的な、特徴のある)なサウンドなのでしょう。