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自分の弱点と向き合うことで類稀なスタイルを生み出した男

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ジョン・スコフィールドといえばハンマーオン・プルオフを駆使した、流れるようなレガート奏法が特徴の一つ(他にもあの最高なタイム感、アウトサイドなフレーズ、ボリューム奏法、ディストーション等々、色々思い浮かべますよね)。

何故彼はそういう演奏スタイルに辿り着いたか。何かの本で読んだと思うのですが(何だったか思い出せません)、彼はこんなことを言っていたと思います。

僕はパット・マルティーノみたいにフルピッキングであの速さで弾けなかった。どう頑張ってもできなかった。だからハンマーオンやプルオフを使って速く弾けるようにした。

「えーっ」と思いました。そりゃあパット・マルティーノは速い。でももっと速い人もたくさんいる。ジョンスコくらいの人なら普通にフルピッキングでマルティーノみたいに弾けたんじゃないのかな、と。

また相当昔に発表した “Jazz-Funk Guitar” という教則DVDで、「あなたはジョー・パスみたいなブロックコードを弾きませんよね。ソロギターの時はルートとオクターブ上の3度、つまり10度みたいなクールな音程をかわりに使いますよね」という感じのことを聞かれたジョンはそれを遮るように、

(弾かないんじゃなくて)弾けないんだよ! 弾けたらいいのになと思うよ! (I can’t! I wish I could !)

と、少し苛立った感じで答えていました(ジョー・パスをバカにしたような発言はしないでくれ、俺がジョー・パス嫌いみたいじゃないか、という雰囲気でした)。

1989年リリースの名盤 “Flat Out” の “All The Things You Are” の冒頭で聴かれるようなメロディとベースノートの乖離の大きいあの演奏は、「ジョー・パスみたいに弾きたくても弾けなかった」というところから生まれたのかもしれません。

多分メセニーなどはもっと器用な人で、マルティーノのようにフルピッキングをすることも、ジョー・パスのように高速でDrop2/3のブロックコードを動かすこともあっさりできてしまった人だったのではないか。ジョンスコはそういう意味では不器用な人だったのでしょう(この点ビル・フリゼールも似ている気が)。

最近の若手はジュリアン・ラージにしてもマイク・モレノにしても「テクニックで悩んだことはない」という感じの人が多いですが、テクニックがないことに悩み、では自分にはどんな表現が可能かを模索し、その果てに唯一無二のスタイルを確立してしまったこの人が私は大好きです。最新作も最高。

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