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Drop 2 voicingを使いこなす

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参考資料的な記事として、Drop 2と呼ばれるボイシング(音の積み方)について解説しておきたいと思います。

まず以下のコードを御覧下さい(画像は全てクリックで拡大します)。

CMaj7 Drop2 Root Bottom

このコードを知らないという人はまずいないはず。CΔ7として知られている有名なフォームです。これ、実はDrop 2という音の積み方でできています。それでは以下のコードたちはどうでしょうか。

CMaj7 Drop2 Inversions

これらの押さえ方を全て知っている、自由に使いこなせるという方はこの記事を読まれる必要はありません。反対に上の例の中に初めて見たものがある、あるいは時々見たことはあるけれどそれが何なのかよく理解していない、という方には続きが参考になるかもしれません。

Drop 2とは

上のコードは全てCΔ7で、”Drop 2″と呼ばれるタイプのボイシングです。これはセブンスコード(ルート・3度・5度・7度)の各音を下から順に積んでいった後(密集配置)、「上から2番目の音を1オクターブ下に移動する」というルールで生成されています。上から2つめをドロップする = Drop 2というわけです。

Eb7を例にあらためて見てみます。3つの転回形を含めると以下の4つのDrop 3ボイシングが存在します(1234弦セットで、いちばん低いポジションで弾ける順から並べてみました)。

Drop2 Inversions - Dominant 7th

Drop 2ボイシングは、ギターでは「隣接する4本の弦」で弾けるのが特徴です。1234弦セット、2345弦セット、そして3456弦セットがあります。任意のセブンスコードは3つの転回形を含めて4種類の押さえ方があります。

同じことを3つのストリング・セット(1234弦セット・2345弦セット・3456弦セット)で出来るので、例えばDominant 7thなら合計12種類の押さえ方が存在することになります。

あとこの記事では深入りしませんが、Drop 2 voicingの多くはCAGEDと呼ばれる伝統的なフォーム・ポジションと近い場所にあったりします。これはCAGEDのAフォームの近くなんだな、などと確認しながら覚えるのも早いと思います。

練習1

上の4つのEb7を、EbΔ7、Ebm7, Ebm7(b5), EbmΔ7, Ebdim7等々、別のコードクオリティに変化させてみましょう。「えっ、タブ譜は置いてくれないの?」と不満に思われるかもしれません。しかし騙されたつもりで、自分の頭で考えながら作ってみて下さい。そのほうが効果的に覚えられます。

上のEb7をEbΔ7にするには、短7度のDbを長7度のDに変更します。他のコードも同じ手順でやってみましょう。地道な練習ですが、これがいちばん早道です。

練習2

1234弦セットで全てのコードクオリティのDrop 2(転回形含む)を作れたら、今度は2345弦セット、3456弦でやってみます。極端に違ったフォームにはならないので安心しましょう。あとDim 7については全転回形で同じフォームになります。当然のことですがあらためて驚いてみましょう。

練習3

いま取り組んでいるスタンダード曲、自分が好きな曲を最初から最後までDrop 2 voicingでなぞってみます。この時、2345弦セットのみ・5〜7フレット以内で弾く、等の制限を設けます。その場所でできるようになったら一つ上の転回形で弾きます。その後はさらに一つ上。次はさらに一つ上。

この後、1234弦セット、3456弦セットで同じことをやります。最後は複数の弦セットを自由に組み合わせてやります。無意識に使いこなせるようになるためには数ヶ月かかると思うので焦らずに少しづつ取り組むのが良いと思います。

サウンドについて

Drop 2 voicingには独特の美しさがあると思うのですが、上手に使わないと音域によっては厚ぼったくなってしまうことがあると思います。ジョー・パス的なソロ・ギターでは活躍しますがアンサンブルではやや配慮が必要かもしれません(特に2345弦セット)。

3456弦セットはソロギター以外でそのまま弾くことはあまりないかもしれませんが、その場所にDrop 2が存在していることは知っている必要があるでしょう。1234弦セットは比較的使いやすいと思います。あとイントロを弾く時にDrop 2の知識は必須と言えるでしょう。

変形・発展させる

Drop 2 voicingを覚えたら、構成音を少しづつ変えることによって様々なコードを作るのも楽しいです。下はEbm7の5度を全音下げた例。結果はEbm7 11です(みんな大好き4度積みフォーム)。ルートを9thする、7thを6thにする、4声はやめて3声にする等、好きに遊びます。

Develop

例えばDominant 7thのルートを半音上げるとします。C7ならC7(b9)になります。するとどの転回形でもディミニッシュとして有名な手の形になっていますよね。Dominant 7(b9)は半音上のディミニッシュと構成音が同じ。こういう様々な気付きがあると思います。指板が前よりも「見える」ようになるはず。

Pat MartinoとDrop 2

パット・マルティーノがCreative Forceという教則DVDで面白い説明をしています。彼はDrop 2という用語は一切使わないのですが、マルティーノにとって下のディミニッシュ・コード(drop 2)は他の様々なコードを生み出す「親」なのだそうです(“Parental Form”と彼は呼んでいます)。

Pat Martino's "Parental form"

E diminished 7thのDrop 2です。構成音はE-Bb-Db-G。ここからが面白いのですが、このE diminishedはEだけを半音下げるとEb7になります。Bbだけを半音下げるとA7になります。Dbだけを半音下げるとC7。Gだけを半音下げるとGb7。つまり4つのDominant 7thコードが生まれます。

それらのDominant 7thコードの構成音をいじるとminor 7thやMajor 7thを生成できるのは上で説明した通りです。つまりこのE diminishedには4つのキーの全てのコードクオリティがあると言えます。

ところでディミニッシュ・コードは短3度上で元の構成音に戻ります。1フレット上のFdimコード、その1フレットつ上のF#dimは構成音は違いますが、シェイプは同じです。1つのディミニッシュには4つのキーがあるので、3つのディミニッシュで12キー全てをカバーできることになります。

つまり大体5フレット前後の領域で、隣接する4本の弦だけを使って、あらゆるコード進行を弾くことができることになります。下はAm7-D7-GΔ7-E7の逆循環の例です。このように弾くことがあるかどうかは別として、手をほとんど動かさなくても弾こうと思えば必要な音は常に近くにあることがわかります。

2516 on 1234 stings, drop2

Kurt RosenwinkelとDrop 2

相当前に書いたKurt Rosenwinkelと一緒に”Body and Soul”を理解するという記事でも紹介したのですが、カート・ローゼンウィンケルは3456弦で面白いDrop 2の使い方をしています。各セブンスコードのルートと7度、5度と3度を交互に弾くという方法です。

例えばAm7-D7-GΔ7-E7の逆循環をその方法で弾くと下のような感じになります(E7のところはちょっと違いますが、要するに1弦飛ばしの2本弦を交互に弾くという発想です)。彼は”Body and Soul”でこれを弾きながら1〜3弦を中心にメロディを弾いていました。

Drop2 by Kurt Rosenwinkel

この「Root and 7th, 5th and 3rd」という弾き方をする人を私は他に知りません。衝撃的でした。クリエイティブな発想ですね。7度や6度のインターバルのサウンドが美しいだけでなく、ガイドトーン(=3度と7度)の繋がりも美しいです。ギターならではの奏法でもあると思います。

Drop 2 voicingの音の積み方を全ての転回形で観察すると、

  • 基本形:1-5-7-3
  • 第1転回形:3-7-1-5
  • 第2転回形:5-1-3-7
  • 第3転回形:7-3-5-1

になっています。カートが「Root and 7th, 5th and 3rd」と言っているのは基本形と第2転回形に当てはまりますが、残りの2つの転回形は「3rd and Root, 7th and 5th」という組み合わせになっています。

Drop 2とDrop 3の関係

Drop 3 voicingの魅力という記事でDrop 3 voicingについて解説してあります。お得な情報としては、1234弦セットで押さえるDrop 2の1弦の音をそのまま6弦に移動させるとDrop 3 voicing(6弦ルート)になります。


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