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その病と共にあれ – Bruce Lee

格闘家ブルース・リーの言葉を紹介します。

ブルース・リーは人生を生きていく上で、そして音楽をやっていく上でもヒントになりうる様々な言葉を残しているのですが、今回はその中でも最も謎めいた言葉の一つについて書いてみたいと思います。

Let yourself go with the disease, be with it, keep company with it – this is the way to be rid of it.

その病から逃れようとせず、じっくり付き合うがいい – それがその病から解放されるための方法だ。

Tao of Jeet Kune Do – Bruce Lee

この言葉における「病」とは何でしょうか。

それはこの言葉を読む人それぞれが判断すれば良いことだと思います。

私達はある意味、誰でも何らかの病と共に生きていると言って良いのではないでしょうか。例えばある特定の楽器でジャズを演奏しようとしているけれど、どうにもうまくいかない。思い通りに行かない。そういう人は何らかの病を抱えている(私を含めて)。

間違った音を弾いてしまう。ここからあそこに移動するための道筋がわからない。鳴らしたいあの音が瞬時に出せない。リズムがずれてしまう。同じ音型で応答できない。指が動かない。

いろいろな病がある。でも大切なのは、そうした個別の病を「見なかったこと」にするのではない。正直に向かい合ってみるんだ。自分がどんな病を持っているのか、正確に特定し、じっくり観察し、それと付き合っていくことだ。ということを、ブルース・リーは言いたいんじゃないかと思います。

上で紹介した言葉は、”Tao of Jeet Kune Do”(「截拳道への道」)という彼の主著(英語版p.13)に記されているものですが、断章形式の本なので彼がこの箴言的な言葉で本当に何を言いたかったのか、正確には特定できません。

それでもこの言葉はかなり長い期間にわたって私を支えてくれた言葉です。自分には色々な欠点がある。短所がある。でも、それが自分に由来するものである限り、容易にそれから逃れることはできない。というか、逃れようとすることは解決法ではない。

逃れなくていいんだ。それらの欠点・短所と共にあれ。その病と徹底的に付き合ってみろ。仲良くなってみろ。話を聞いてやれ。そうブルース・リーは言っていると思います。

私は、審美的な側面において、人間は「美しくないもの・イヤなこと」を実践し続けることはできないのではないかと考えています。少なくとも、自分自身の価値基準に照らしあわせて、美しくないもの、または何かすごくひどいもの、を継続的に表出し続けることはできないのではないか。

実人生において、すごくイヤな人、乱暴な人がいたとする。でもそういう人でさえ、永遠にずっとイヤな人、乱暴な人であり続けることは難しいはず。時々イヤな奴になることはあるかもしれない。でも永遠にずっとイヤな奴であり続けることは、かなり難しいのではないか。

自分が何かヘンな音を出してしまったとする。でもその音に目を瞑るのではなく、それをじっくりと観察するなら、次からはそういうヘンな音を出す確率は減っていくはずさ。より自分の望む音を出せるようになるはずさ。そういう話として、私はこのブルース・リーの言葉を理解し、自分のものとしています。

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Tao of Jeet Kune Do
Tao of Jeet Kune Do

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