今年7月に調査会社のニールセンが発表した、北米での人気音楽ジャンルのチャート(2017年度前半分)は大きい話題となりました。調査開始以来はじめてロックが首位から陥落し、R&Bとヒップホップ(合算)が全米で最人気の音楽ジャンルとなったからです。
ロックはアルバムの販売(CDやダウンロード)においては未だトップの座を維持していますが、音楽の主流の消費形態がストリーミングであることを考えると、ロックがもはやトップでないことは明白。また同社によると、今後もこの傾向は顕著でR&Bとヒップホップが伸びていくそうです(この2者の間ではヒップホップがR&Bを引き離していくだろうとのこと)。
下にチャートを貼ってみます(U.S. Music Mid-Year Report 2017より)。
図中ヘッダーの英語の部分は下のような意味です。
- Physical Album Sales … 物理媒体によるアルバムセールス
- Digital Album Sales … デジタル・アルバムセールス(ダウンロード販売)
- On-Demand Streams … オンデマンド・ストリーミング配信
- TEA(Track Equivalent Albums) … 10トラックで1アルバム換算
- SEA(Streaming Equivalent Albums) … 1500ストリームで1アルバム換算
さてジャズの人気はどのあたりかというと…下から数えて2番目。最下位のクラシック音楽と数字的にはほぼ同じで有意差はなさそうです(負けている項目もあり)。事実上この2ジャンルが現在の北米で最も人気のないジャンルなのでしょう(そういえばブルースは何処に入っているんだろう…)。
面白いのが、ジャズで最も販売成績の良い媒体が物理媒体、つまりCDやビニールレコードであること。これはロックも同じです。反対に首位のR&Bとヒップホップは圧倒的にストリーミングが優勢。ポップスも若干ストリーミング派が多い(ストリーミングはSpotifyやApple Music等のサービス)。
他ジャンルとしてはカントリーの人気も注目です。カントリーは日本人が思っている以上に巨大な市場なのだと聞いたことがあります。
ゴスペル等の教会音楽はジャズよりも人気!しかもそれは子供音楽よりも人気!(Childrenってアナ雪のテーマとかそういうやつなのだろうか…)。それらはどれもジャズより上!
そして2017年前半、最も売れたソング(販売・ストリーミング共)はエド・シーランのシェイプ・オブ・ユーでした(アルバム”Divide”は総合2位)。下の動画は本記事執筆時点で29億回再生されています。この曲、私にはヒップホップ調に聴こえます(歌いまわしは50 centを思わせます)。やはりヒップホップが優勢なのか…
この曲を最高にカッコいいジャズ・ソロギターアレンジにしてYouTubeにアップロードしたらあなたも一躍人気者!…という冗談はさておき、皆さんはどんな感想を持たれたでしょうか。個人的に音楽は消費の対象ではないし、北米での人気がこうだからといって寂しくもなんともないのですが、何故最下位に近いのだろう、とは素朴に思います。
ジャズとクラシックは他ジャンルと比べて踊りにくくて座って聴くことが多いからかな、などと思いました。