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本能とコントロールの幸せな結婚

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理論が嫌いだ、という人にたまに遭遇します。音楽に限らず、表現というものは理論から離れているべきだ。理論は、自然な表現を妨げる。理論は、私から自由を奪う。そう彼等は言います。

計画的な練習が嫌いだ、という人にもよく遭遇します。私はいつでも本能のままに、自由に弾く。訓練は必要ない。音楽マシンになりたいわけじゃない。メトロノーム? 冗談だろう、と。

一方で、理論や厳しい訓練に極端にはまってしまう人々にも遭遇します。理論がわかれば、道が開ける。光が差す。テクニックが全てを可能にする。良い表現には型が、テンプレートがあるはずだ。そのように信じて、時に自分の内側からの声、ボイスに対して耳を閉ざしてしまう人達。

多くの場合、両グループは敵対しています。また、これは音楽表現以外にも、会社とか、政治といった日常生活や社会の中でも観察できる対立的な図式です。

練習の合間に手に取ったブルース・リーの本に、こんな言葉が書いてありました。

人間とは「自然な本能」と「コントロール」の結婚による産物である。

一方に自然な本能というものがあり、一方にコントロールというものがある。あなたはこの2つを調和的に合体させなければならない。

本能を極端に重視したら、あなたはかなり非科学的な存在になる。コントロールを極端に推し進めてしまうと、あなたは機械となり、人間的な存在ではなくなる。

故に、2つをいかに上手に組み合わせるかが大切なのだ。

純粋な自然さ、でも、純粋な不自然さ、でもない。

理想は、不自然な自然さ、あるいは自然な不自然さ、なのである。

本能とコントロールの幸せな結婚

「理想は、不自然な自然さ、あるいは自然な不自然さ、なのである(“The ideal is unnatural naturalness or natural unnaturalness”.)」という禅問答のような言葉。私自身、こうした考え方を心と身体でわかるようになるまで相当の年月が必要だった気がします。

今でも、何か調子が悪い時は、過度に本能的なものへ傾斜しているか、過度に何かをコントロールしようとしている時です。

 


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