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ジャム・セッションに参加するために必要な唯一の資格

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ジャム・セッションに参加するために何か必要な資格があるとしたら、それは一体何だろうか、と考えてみました。

初対面の、あるいはほとんど知らない人々と、有名なスタンダード曲を一緒に演奏する。大きいフレームワークを共有して、その上で何が起こるか皆で試してみる。楽しんでみる。ジャム・セッションがそういうものだとして、それに参加していいのはどんな人でしょうか。初心者は参加してはいけないのでしょうか。

一個人の意見ですが、ジャム・セッションに参加する資格があるか否かは唯一、「他人とコミュニケートする意志」があるかどうかに尽きると思っています。

私は「上級者」という言葉が好きではないのですが(そもそもまともな人は自分を上級者と呼んだりしない)、セッションには「上級者」も、中級者も、初心者もやってきます。「中・上級者向けセッション」というのは存在しますが、「初心者お断り」を掲げるセッションはあまり聞いたことがありません。

勿論、「初心者お断り」にしてしまうと敷居が高くなる=「客」の入りが悪くなる=セッション・ホストの方々の収入が減ってしまう、という理由でそうはなっていないというのもあると思いますが、それ以上にやはり「セッションは初心者でも参加しても構わない場なのだ」という共通認識があるからだと思います。

あなたはまだヘタだからセッションに参加しないで下さい、という雰囲気のセッションはあまり多くないと思います。初心者は来ないで下さいね、というセッションもあまり経験したことがありません。問題は「初心者かどうか」ではないのだと思います。

ただ、参加者した初心者らしき方に「他人とコミュニケートする意志」が全くない、あるいはジャズという音楽が基本的に他のプレイヤーとのコミュニケーションを通じて一緒に音楽を生み出していく行為であるという発想を知らない人は、煙たがられることはあると思います。

逆に言うと、楽器をはじめて三ヶ月の人でも、指があまり動かない人でも、使えるのはブルース・スケールだけの人でも、「他人とコミュニケートする意志」があれば、どんなジャム・セッションでも敬遠されることはないと思います。

そもそも4バースでソロを回すような時、前奏者のアイデアを引き取ってフレーズを展開するようなことは初心者にはかなり難しいことでしょう。それでも、例えば前奏者が何か特徴的なリズムを使ったのなら、そのリズムだけを反復してみたりとか、そういうことは初心者にもできるはず。

もし家で必死に暗記・練習してきたフレーズを曲の一部にあてはめるだけ、それ以外の時はコンピングもしなければ、一緒に演奏しているメンバーを「風景」のように扱ってしまうのであれば、その人は演奏レベルとは無関係に敬遠されることはあると思います(「君はカラオケをやりに来たのか?」という感じで)。

ジャム・セッションとは、一言で言うとやはり「みんなで一つの音楽を作り上げる」ことだと思います。参加メンバー各人の貢献、共同作業があって、最終的に数分間の音楽が現れ、消える。上手下手に関係なく、何か自分のアイデアを出してみる。それがワークするかどうかを試してみる。そういう場ではないかと。

長いフレーズを弾けないとか、バップのイディオムを弾けないとか、オルタードを弾けないとか、そういうのは多分関係ないんだと思います。サックスの人が半拍休んで何か「ン ブーッ」と吹いたとする。その時、たとえ見当違いの音程であっても、セッション初体験の人が「ン ブブッー」と「応答」したとする。

それは良いセッションではないでしょうか。ジャズは演奏者間のコミュニケーションが重要な音楽ですが、そのコミュニケーションのレベルには様々な段階があり、「どうだこのフレーズに君はどう応える?」というレベルから、「ビビビー」に対して単に「ビッビビビー」と応えるレベルまで様々あると思います。

そのどれもが楽しい。そのどれもが真実で、オーセンティックだと思います。そして、こういうコミュニケーションを楽しむという気持ちがあれば、どんな「初心者」でも積極的にセッションに参加していいと思います。上手下手ではない。「意志」があるかどうか。

コミュニケーションを取ろうとする意志は伝わるものだと思います。ベースやドラムをきちんと聴いているか。みんなと一緒に音楽を生み出そうとする意志はあるか。それが伝われば、邪魔者扱いされることはそうそうないでしょう。


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