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演奏がうまく行っている時の気持ち

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格闘家ブルース・リーの主著「截拳道の道」に次のような一節があります(このブログでは何度かブルース・リーを取り上げていますが、それは武術に関する彼の思想がほとんどそのまま即興演奏に通じるもののように思えるからです)。

I’m moving and not moving at all. I’m like the moon underneath the waves that ever go on rolling and rocking. It is not, “I am doing this,” but rather, an inner realization that “this is happening through me” or “it is doing this for me.” The consciousness of self is the greatest hindrance to the proper execution of all physical action.

私は動いている、私は全く動いていない。私は波の下で転がり、揺れ続ける月のようだ。「俺はいまこれをやっている」という感じではない。そうではなく、「俺を通じてこれがいま発生しつつある」または「これは俺にこれをやってくれている」という内面での気付き。自意識は、あらゆる身体的動作の適切な実行にとって最大の障害物なのだ。

Tao of Jeet Kune Do – Bruce Lee

これは演奏がうまく行っている時の気持ちと同じだと思いました。自分自身というものがあって、自分が音楽を支配するかのように音楽を操作して行くのではない。そうではなく、音楽が私を通じて、それ自身を勝手に実現していく感覚。

残念ながら私のような未熟者にはこの感覚はしょっちゅう味わえるものではないのですが、一方、私のような未熟者に対してさえこういう「音楽の神秘」が到来することがあります(だからやめられない)。

ところでこういう感覚は、(練習ではない)本番の演奏で発生しうるものであって、練習時には全く別のマインドセットで取り組む必要があると考えています。「練習」は武術における「型(カタ)」のようなもので、それはそれでやらなければならない。そして実戦では全てを忘れ「フロー」に身を任せる。

ブルース・リーの著書で「敵」という言葉が出てきたらそれを「曲」と、「打撃」という言葉が出てきたらそれを「フレーズ(または発音)」と読み替えると、それはいつも即興演奏の秘密について書かれているような感覚にとらわれます。

Tao of Jeet Kune Do Tao of Jeet Kune Do

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