それは他人に聞かせる音楽としてどうなのか、という問題はひとまず置いておくとして、ある一つのアプローチで何かをやり切ってみる、という練習は実り多い結果をもたらしてくれると感じます。
例えば、知っているスタンダード曲を最初から最後までメロディック・マイナー・スケールで弾く練習、というのも面白いと思います。メロディック・マイナーとその7つのモードについてはこのページで詳しく解説してあります。
1曲を全部メロディック・マイナーで弾く。そんなことは可能なのか。勿論可能です。コードタイプ・機能別に見ていくと、次のような現象が起こります。
- IΔ7の時は、短3度下のメロディック・マイナーで弾く。その結果、リディアン・オーグメンティッドで弾いていることになる(コードで言うとIΔ7#11, #5)
- iim7の時はルートからはじまるメロディック・マイナーを弾く。コード的にはiimΔ7になる
- iim7(b5)の時は、短3度上のメロディック・マイナーで弾く。その結果、ロクリアン#2で弾いていることになる
- V7b9の時は、半音上のメロディック・マイナーを弾く。その結果、オルタードを弾いていることになる
- V79bの時に、5度上のメロディック・マイナーを弾いてもいい。その結果は、リディアン・ドミナント(リディアンb7)で弾いていることになる。コード的には#11で、何もおかしいことはない
- 解決しないセブンス・コードでは、やはり5度上のメロディック・マイナーを弾いてもいい。リディアン・ドミナントになる
iiimやvimが登場したら、それらをトニックとしてIΔ7的に弾く。ディミニッシュは可能ならV7(b9)に変換する。こんなふうに、極端に言えばメロディックマイナーのフレーズを何か一つでも弾けるのなら、それで1曲全部を弾けてしまうことになります。しかも、結構不思議な色彩感覚で弾くことができると思います。
勿論複数のフレーズを弾けるのならもっと面白いと思います。この手の練習はなかなか楽しく、指板と聴覚を同時に探検しているような気分になります。勿論、IΔ7#5のサウンドを知らなかったり、リディアン・ドミナントのサウンドに慣れていない場合には難しいかもしれませんが、そうでない方にはおすすめです。