ジャズ系ギタリストの定番ピック・JIM DUNLOP JAZZ IIIとその仲間たち。音色的な問題から私自身は現在別のピックをメインで使っているのですが、過去にはだいぶお世話になりました。現在でも必要に応じて使うことがあります。
JAZZ IIIには様々なバリエーションがあり、どれも似た名前で呼ぶのもどうかと思われるほど使用感が違うのですが、概して「速弾き向き」という共通点があると思います。今回手元にあるJAZZ IIIとその仲間たちをじっくり弾き比べ、印象を備忘録的にまとめてみます。
試したピックは下の写真に写っているもので、評価時のギターはCleartoneのミディアムゲージを張ったES-335。Donna Leeのテーマやコードを高速で弾いて試しました。以下、番号順にレビューを書いていきます。
(ご注意:以下は全て1プレイヤーによる主観であり、内容には何の保証もありません。特に音色については各人により印象が大きく異ることがありうるのでご留意下さい。また評価は順不同です)
1. JIM DUNLOP ULTEX JAZZ III 2.0(黒)
速弾きという意味では最強。しなりが全くと言って良いほどないせいか、先端の極小の面積でヒット可能。問題は音色があまりにブライトである点。バラードとか無理。ギターやアンプのトーンコントロール程度ではどうにもならない程ブライト。イコライザー等での調性が必要なレベル。フュージョン系なら問題ないかも。速度は出るだけに音色が残念。天は二物を与えず。私の評価:★★★☆☆
2. JIM DUNLOP ULTEX JAZZ III (黄色がかった透明)
上のULTEX JAZZ III 2.0(黒)よりも速弾きはほんの少しだけやり辛い印象はあるものの(但し誤差レベル)、音色はよりマイルドかつファットで十分に「普通のジャズ」(=クリーントーンでスタンダードを演奏する等。以下同様)でも使える音色。先端の弦離れも良く、ひっかかりにくい。今回レビューしたピックの中では最も好印象。私の評価:★★★★★
3. JIM DUNLOP JAZZ III(黒)
いわゆる「普通のJAZZ III」。ド定番のピックなのは承知していますが、個人的には上の黄色っぽいULTEX JAZZ IIIに比べて先端がほんの少しひっかかる印象があります。音色も黄色ULTEX JAZZ IIIのほうがやや明るく、輪郭がはっきりしていると思います。ほんのちょっとだけもっさりしています。コードはややブライト気味。私の評価:★★★☆☆
4. JIM DUNLOP JAZZ III(赤)
上のJAZZ III(黒)と形状・厚みとも全く同じに見えるのですが明らかにサウンドが違います。素材が違うのでしょうか。こちらのほうがウォームでジャジー。弾きやすさもJAZZ III(黒)より少し上。個人的には黒よりこちらのほうが好み。これに限らず全く同じに見えるピックでも色が違うと別物のことがあるので要注意。私の評価:★★★★☆
5. JIM DUNLOP ERIC JOHNSON
JAZZ III(黒)に似ているものの、よりシャープで少し明るめの味付けになっているように感じます。JAZZ III(黒)よりしなりが少なめのせいか、速弾きは若干こちらのほうがしやすいです。少し明るめとはいっても十分普通のジャズをやれる音。コードはブライトすぎず、やはり普通のジャズをやるのに不都合なし。悪くないと思いました。私の評価:★★★★☆
6. JIM DUNLOP MAX-GRIP JAZZ III
JAZZ III(黒)に比べて、グリップ部のせいかやや厚みがあるように感じます。質量が増えているっぽく、ピッキングが僅かにひっかかる印象。音色は可もなく不可もなく。コードを弾くと若干ショートディレイがかかっているような感じがして不思議です(説明が難しい)。個性的な音。これが好きという人はいると思います。私の評価:★★★☆☆
7. JIM DUNLOP TORTEX 1.14mm(黒地に黄色ロゴ)
形状がJAZZ IIIに近いのでこれもレビューします。黒地に黄色ロゴのタイプ。JAZZ III(黒)より少し硬めで明るめの音色、軽快さもあり。滑りやすい。中途半端で私にはあまり合わず。なおこの黒地に黄色ロゴのTORTEX 1.14mm、ネットで検索しても正体がよくわかりません。下のシルバーロゴとは明らかに違う製品なので購入時は要注意。私の評価:★★☆☆☆
8. JIM DUNLOP TORTEX 1.14mm(黒地にシルバーロゴ)
上のピックと外見はほとんど同じように見えますが、何故か音色が全然違います。こちらのほうが上のものよりマイルドかつファットなジャジーな音が出る。ULTEX JAZZ III (黄色がかった透明なもの)に非常に良く似た音色。しなりも少なく、速弾きも結構しやすいです。太くて良い音。ULTEX JAZZ III に次いで好印象。私の評価:★★★★★
9. JIM DUNLOP JAZZ I
先端が丸いにもかかわらず、そこそこ速弾きもしやすいのが不思議なピック。音色はダークすぎず、ブライトすぎず。コードを弾くと、バラードでも使えそうな抑制された音色。これが合うという人もいそう。速弾き的にはJAZZ III(黒色)に劣る。私の評価:★★★☆☆
10. JIM DUNLOP JAZZ II
これはですね、JAZZ IとJAZZ IIIの中間のようなピックです(そのまんまやないかー!!)。いや本当そういう感じで、JAZZ Iよりも先端の形状がやや鋭角的。JAZZ IIIほどのシャープさはなし。私の場合これは中途半端であえて使わおうとは思いません。微妙。私の評価:★★★☆☆
11. JIM DUNLOP XL SERIES JAZZ III(赤)
先端の形状は普通のJAZZ IIIですが大きめのティアドロップ形状で、もはや同じJAZZ IIIとは呼べない感じです。JAZZ III系のピックは、先端の形状だけでなく絶妙なサイズ感がアイテンティティなのでしょう。速弾き的にはあまりメリットがなく、かといって驚くほど音色が良いわけでもなし。音色重視なら他のピックを選ぶので、個人的にこのピックはない。 私の評価:★☆☆☆☆
12. JIM DUNLOP John Petrucci Jazz III
ジョン・ペトルーシモデル。これもJAZZ IIIの仲間なのだそうです。大きさ的にはJAZZ IIIシリーズと上の赤いXLとの中間くらい。これはULTEX JAZZ III 2.0(黒)に非常に良く似たピックだと思います。速弾きのしやすさ・サウンドともに酷似。音があまりにブライトで私の場合やはりこれはないです。速弾き的にもULTEX JAZZ III 2.0のほうがしやすく感じます。私の評価:★★☆☆☆
といった感じです。ところで速いパッセージを積極的に弾かないのであればこれらのJAZZ III系にこだわる必要はないと思います。音色を重要視するのであれば他にも様々なピックがあります。
恐らく一般論として、先端の尖ったピック・しなりの少ない硬質な素材のピックは速弾きしやすい反面、音色がトレブリーになりがちな傾向があるということは言えるように感じます。
ピック探しの旅は終わりませんね。その時々の技術レベルや求めている奏法によっても変わってくると思います。ULTEX JAZZ III 2.0(黒)などは音色的に問題があるとしても速弾きはかなりやりやすいので、速弾きの感覚を養う目的で練習時に使用するのはありかなと思いました。