人は五線譜を読めば読むほど、ギターが上手くなるのではないか。という仮説を持っています。どういうことかというと…
例えば「黒本」(最近便利なハンディ版が出ました)のリードシートを例に説明します。私はいま、通勤電車に乗っていて “Confirmation” のテーマメロディを読んでいるとしましょう。p.48のAセクションが見えます。
知っているメロディなので頭の中で鳴ります。最初の音、Aは上に書いてあるコードFの3度。次のCは5度。4度から3度へカッコよく下降して、クロマチック・アプローチでEm7(b5)の3度であるGに着地。と、このように日々考えているうちに、「実音A=FMajの3度・実音G=Emの3度」という関係が脳に定着する。繰り返しやっていれば。
そしてこのメロディを指板の何処で弾くか。脳内で指板をイメージします。最初のA。4弦7Fを薬指で押さえることにしよう。すると見えるのはあのFのフォーム。同じ音を人差し指で弾く。こっち側でも弾ける。どっちが弾きやすいかな。2小節目のC#、A7の3度であるこのC#は何処で弾こう。5弦の4Fか、それとも6弦の9Fか。
1オクターブ上で。2弦10FのAを薬指で。Drop2のFのルートフォームの近く。3弦14Fを薬指、または人差し指で。どのポジションで続けても常に周りにコードトーン・自分の知っているコードボイシングが見えるかな。等々、考えながら読譜します。同時に、音も頭の中で鳴らします。この結果、指板上の音名がより頭に刻まれるのではないか。
実音Aとは? と聞かれたらすぐに B7の7度、GMajの9度、F#m7の3度、GmMaj7の#2、EbMaj7の#11、と次々と答えられるようになるのではないでしょうか。続けていれば。同時に、それを指板の何処で、どの指で押さえればいいのかということも同時に脳に定着するのではなかろうか。という仮説です。
ギターで押さえられないコードの楽譜を読むのも良い効果があるように感じています。例えば下のようなものはギターでは押さえられないのですが、C#7の上にDmトライアドをのっけているのか、C#7(b9, b13)とも取れるな、アルペジオだと指板の何処で弾けるかな…と考えたりします。ギターでは無理な表現から学ぶことも多いです。
あと以前、脳神経科学の何かの本で読んだのですが、他の演奏者の指の動きを目で見たり、脳内でイメージすると「指を動かす脳神経細胞」が活性化するらしいんですね。なので実際に弾くのに近い練習効果はあるように思っています。通勤電車の中で下のようなものをボーッとニギニギしているよりもずっと効果的なのではなかろうか…
どんな楽譜でも(初見の曲でも)脳は鍛えられると思います。下のような簡単なものでも良いのではないかと。頭の中で音を鳴らしながら、指板の何処で弾けるか、何処で弾こうか、この音程は5度なんだな、などと考える。音楽脳がはたらいているのがわかります。
五線譜が読めない、または、読めるけど苦手だ、という場合、あえて読むようにすると良い効果があったりしないのだろうか。私自身は、むかし「視覚的要素に頼りたくない、右脳だけで自由にアドリブできるようになりたい!」と思い、楽譜から距離を置いていた時期があります。それはそれで必要な練習だったのかもしれないのですが…
一つ言えるのは、ギターでよく使われるタブ譜。フィガリングを説明するために必要不可欠な局面はあるものの、あれだけ見ていても脳は活性化しないと思います。ダイアグラムのほうがまだいい。いちばん良いのはやっぱり五線譜。五線譜を読みながら脳内で指板をイメージする。
今年はこれまで以上に楽譜を読んだり書いたりしたいと思います。脳が関与しない指の訓練はあんまり意味がないように感じています。指を動かすのは脳。脳を鍛えるのだ! ゆっくりでもいいので、丁寧に読んでみる。楽しいです。時間が過ぎるのを忘れます。
終点・八王子〜八王子です やべーっ乗り過ごした遅刻!!
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