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日本人ジャズ系ギタリストの音源を聴く(4):市野元彦 “Sketches”

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ポスト・メセニー&スコフィールド、という表現を何処かで見たような気がします。2人ともまだまだ決して古くはなく、1mmたりとも時代からズレた音楽をやっていないと思いますが、同時にメセニー&スコフィールド以後、という表現もわかるような気がします(ロジャース、バーンステイン、クライスバーグ、ローゼンウィンケル等)。

その「ポスト・メセニー&スコフィールド」的なサウンドスケープが気になる方なら、市野元彦氏の “Sketches” というアルバムは絶対に聴いておかなければならない1枚でしょう。名盤だと思います。

なお前回の記事はこちら:日本人ジャズ系ギタリストの音源を聴く(3):田中裕一 “I’m happy, walking down “jalan”.”

市野元彦 “Sketches”

市野元彦 “Sketches”

Personnel – 東保 光 (bass) 嘉本 信一郎 (drums) かみむら 泰一 (tenor sax) 敬称略

遡ること9年前、2007年にリリースされたこのアルバムは私にとって衝撃的なものでした。衝撃的、などと書くと何かパット・マルティーノみたいにゴリゴリ弾きまくっている音楽を想像されるかもしれませんが、実際はその対極で、静謐さの中にメラメラと燃えるパッションが感じられるような、誤解を恐れずに書くと「熱いECM系」のようなサウンドです。トーン、音色も抜群に美しくて頭がクラクラしそうです。

これは市野氏の(恐らく)デビューアルバムで、日本にこれほど独自の音楽性を持ったギタリストがいるのかと驚かされ、誰に似ているわけでもないけれどひたすらメロディックなフレーズに魅了・圧倒されたのでした。トライアドや基本的なセブンス・コードの美しさに改めて胸を打たれ、自分自身の表現を見直すきっかけになった1枚でした。

これを聴いて思ったのです。俺はどんな音楽をやりたいのだろう、と。自由になるために色々な練習をしてきたけれど、自分は自由を手に入れただろうか。自由になるというのはどういうことだろうか、と。自分の言葉、自分の言語を持つということは、どういうことなんだろう、と。

収録曲の “Childhood” は現在でも氏がライブでよくプレイされるのでご存知の方も多いと思います。この名曲を聴くと、私はThe Beatlesが最高だった時期を想起します。本当に美しいですよね。でもこの感覚は、知っている人にしかわからないかもしれない。

言葉で表現しようとすると、どうしてもポスト・メセニー&スコフィールドとか、コンテンポラリーといった言葉を使いたくなってしまうのですが、市野さんの音楽を聴いていると、そうした言葉でカテゴライズすることが本当にバカバカしいというか、無意味だなと感じます。このブログなど全く無意味です。とにかく聴いてもらいたい1枚。

「静謐さの中にメラメラと燃えるパッション」などと書きましたが、最近のrabbitooのライブなどでは熱く弾きまくる市野氏の姿も目撃されており、たぶんライブに行くとみんな感動すると思います。すごいですよ。これが9年前の録音とは信じがたいです。まるで昨日録音されたばかりのように思える音源です。


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