トランシルヴァニア生まれ・ハンガリーの作曲家リゲティ・ジェルジュ (Ligeti György Sándor,1923-2006) について書いてみたいと思います。とても好きな現代音楽作曲家です。ハンガリー圏の人なので「リゲティ」のほうが名字です。
リゲティの作品は、現代音楽としてはストレートなわかりやすさを持った作品が多いように思います。例えば1978年作曲の “Hungarian Rock”。この魅力はもはや説明不要でしょう。師事していたバルトークを思わせる変拍子(2+2+3+2の9/8拍子)、ハンガリー民謡的な雰囲気。この時代のリゲティはポリリズムに入れ込んでいたようです。
師匠・バルトークの下の曲に雰囲気が似ています。「ミクロコスモス」収録の “6 Dances in Bulgarian Rhythm”の最後の曲(No.153)で3+3+2/8拍子。バルカン半島の土着の音楽にはこういう面白いリズムがたくさんあるらしく、バルトークもリゲティも関心を持っていたようです。
しかしリゲティでいちばん有名なのは映画「2001年宇宙の旅」で使用されたこの “Atmosphères (1961)” や “Lux Aeterna (1966)” でしょう。「マイクロポリフォニー」と呼ばれるスローな動きの多声手法で作曲されているとのこと。ジャズ系ギタリストではベン・モンダーがリゲティを相当聴いたと語っているのですが、なるほどという感じです。
電子音楽の “Artikulation” という作品も面白いです。電子音楽で有名なカールハインツ・シュトックハウゼンを想起させる(リゲティは彼のもとで学んだ)曲ですが、Rainer Wehingerというデザイナーがこの曲に「聴くためのスコア」を付けました。下の動画がそれで、リゲティ公認のものになったそうです。X軸・Y軸が音高と音価に正確に対応しているわけではないそうですが、楽しいですね。最初からこういう図形楽譜だったのではないかと思わせるほどです。
この「100台のメトロノームのための交響詩 (1962)」もわかりやすく、グルーヴを感じる楽しい音楽です。現代音楽に全く興味がない人にとっては意味がわからない作品かもしれませんが、やはりポリリズムへの興味がこういう作品を産んだように思われ、リゲティにとっては当然ながら自然な作品だったのでしょう。「マイクロポリフォニー」を想起させる「マイクロポリリズム」といった感じの発想が頭の中にあったのでしょうか。
リゲティはいつも明確なコンセプトを持ち、聴き手にとってもそれがわかりやすい感じの音楽を作っていたように思います。個々の技法は勿論、そういう態度的なところを特に学びたいと思います。
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