ぼくのギターはとても調子が悪い。1弦から3弦まで、5フレットから8フレットのあいだを押さえて弾くと、弦がビリビリと不快な音を立ててしまうのだ。
このままでは練習に集中できないので、ぼくは町の楽器屋さんにギターを持っていくことにした。こういう症状は「フレットのすりあわせ」で治るとインターネットに書いてあったからだ。
楽器屋さんに行く途中、「ジャズギター診療所」の亜波黒先生に出くわした。
「おう、ジャックじゃないか。何処に行くんだね?」
「こんにちは先生。ギターの調子が悪いので、楽器屋さんに修理してもらいに行くんです」
「ほう。ちょっと貸してみなさい」
亜波黒先生はぼくのES-335を手に取り、ネック全域で弾いてから、こう言った。
「すりあわせに持って行くんじゃろ?」
「はい」
「ダメだ」
「え?」
「何故5フレットから8フレットのあいだでビビりが発生しているか。その原因はわかるかね?」
「……」
「君はそのポジションでしか弾いておらんからだ。ハイポジションでの練習をさぼっているだろう。今後一ヶ月間、8フレット以下の使用は禁止だ。そうすればギターも君の腕前も良くなる。当分、全てを1〜2オクターブ上で弾く練習をしなさい」