最近、練習について面白いことに気付きました。
それは「新しい何かを習得しようとする場合、必ずしもそれを毎日練習する必要はないらしい」ということです。
例えばいま、新しい20種類の項目に取り組んでいるとします。フレーズでも、ボイシングでも、内容は何でも良いのですが、学生でもない限り毎日10時間も練習できるわけがないので、1日のうちにこなせない練習項目が出てきます。
毎日それらの練習項目をきっちりこなすためには、各項目の練習時間を短くすれば良いわけで、実際そういう練習もするのですが、どうしても「これは1〜2時間じっくり取り組んだほうが良い」と本能的に感じる練習もあります。すると、その日にやれなかった練習項目が発生してしまいます。
「今日はあれをやれなかった…」というモヤモヤとした気持ちが残るのですが、そんなことを悔やんでも意味がないのでそのやれなかった練習は、翌日やります。そして翌日も練習できなかった項目は、翌々日にやります。結果的に、ある練習項目を「2〜3日置きに」練習していました。「でも、これ効果薄いんじゃないかな…」と半ば諦めつつも。
それが、結構悪くないのです。毎日やらないと身に付かないだろう… と思い込んでいたものでも、とりあえず身体に染み込む、脳が内容をしっかり理解する、というレベルであれば、2〜3日置きの練習でも効果があることがわかったのでした。何か予想以上に色々なことを吸収できていることに気付きました。
練習自体は毎日欠かさず何時間もやるのですが、ある練習項目を「数日置きにしかやれなくても」案外大丈夫、意味は十分にある、ということを実感しています。勿論これは私の場合であり、練習する内容によってはあてはまらないこともあるかもしれません。
ただ、5〜10分でも良いので毎日欠かさず2ヶ月くらいは続けたほうが良い練習もあると思います。例えば管楽器奏者なら「今日はロングトーンはやらない」ということは多分ないでしょう(ロングトーンは新しい何かを身体と意識に入れる練習ではないかもしれませんが)。一概には言えないところがあると思います。
この現象、ウェイト・トレーニングにおけるローテーションに似ていると思いました。今日は上半身、明日は腹筋、明後日は脚、等々、毎日違う部位を鍛えるという方法です。一日に全部詰め込んでしまうと疲労が抜けない、訓練項目を限定したほうが密度の高いトレーニングが出来る等の理由でそういうローテーションを組む人が多いと聞きました。
さらに違う角度で調べてみると、間隔反復(Wikipedia)という概念があることも知りました。
間隔反復(英:spaced repetition)は、前の学習から、その学習内容の復習までの間隔を延ばしてゆくことにより、心理学の間隔効果を利用して効果をあげる学習技術である[1]。間隔伸張法とも。
この原理は多くの分野において有効であるが、間隔反復は、学習者が非常に多くの事柄を長期に記憶しなければならない分野に適用されることが多い。
練習で私が経験している現象と関係がありそうです。新しい何かを本当に確実に弾けるようにするには、いずれ毎日それを反復する時期も必要になるとは思うのですが、「今日はこれ全部こなさないと!」という強迫観念的なものは、あまり意味がないような気がします。それよりも、今日やる練習項目を高い質でこなす。そのほうが良さそうです。
ちなみに「2〜3日置き」という間隔が最適かどうかはわかりません。間隔が短すぎても、長すぎても良くないような気がしています。また、上の「間隔反復」という考え方では、間隔を伸ばしていく方法も記憶のためには良いらしいですが、楽器の場合は単なる記憶以上の浸透(神経系統の訓練)が必要なので、少し違うような気もします。
何をいつ練習したか、練習記録をつけるのも有効だと思いますが、「そうだ、今日はあの練習をしよう。あれを今日やっておきたい。一昨日にやったきりだ。今日やろう。」と自然に思い出すことがあり、そういう時は、良い練習ができている感じです(私の場合です)。