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無免許でジャズを乗り回す男たち (2)

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「池袋Outro」でのセッション後、店を出た俺は見知らぬ男たちに拉致され、廃工場に監禁されてしまった。

両手を縛られ、天井から吊るされている俺に棍棒を持った男が言った。

「ジャック。さっきお前が弾いていた風変わりなフレーズ、あれの元ネタは何だ。あんなフレーズはどんな教則本でも見たことがない。どこで仕込み、どうやって弾いた。吐け!」
「ふん、絶対に教えるもんか。元ネタをバラすくらいなら、死んでやる!」
「そうか。なら拷問するしかない」
「……」
「これからお前に、あるギターソロを聴かせてやる」
「……?」
「そのギターソロは、始まったのかどうかさえわからないような曖昧な出だしで始まり、リズムはヨレヨレの、コード進行もトーナリティも表現できていない、そして歌心のまったく感じられないアドリブ・ソロだ。ソロの終わりも終わったかどうかがはっきりしないために後続のプレイヤーが戸惑っている、そんな演奏だ。しかもそれが8コーラスも続く。お前にこの演奏が我慢できるかな?」

そう言って男は俺の頭にヘッドフォンをはめた。

「や、やめろ!そんなソロだけは勘弁してくれ! クロエーーーーーーッ!」 

俺の耳に大音量で、考えうる限り最も望ましくない即興演奏が流れはじめた。粒が不揃いのES-335のクリーントーン、ピッキングミスでギャンと鳴る開放弦、走りまくるリズム、コード進行もトーナリティも表現できていない、歌心のまったくない、自信のなさから無駄に弾きまくっている手癖のようなアドリブ・ソロ…

ー30分後ー

男にバケツの水をぶっかけられ、俺は意識を取り戻した。

「どうだ、吐く気になったか。あの不思議なフレーズの秘密を言え!」
「嫌だ。あれは秘密のままでなければならない秘密だ」
「そうか。ところでいまのギターソロは、誰が弾いたものか、わかるかな?」
「……?」
「あれはな、2年前、お前が『高田馬場NOTHIN’』で弾いていたソロだ」
「……嘘だ」
「嘘じゃない。あのひどい演奏は、まさにお前自身が弾いたものなのだ」
「……俺は信じないぞ!」

俺は再び意識を失った。


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