先日コットンクラブで行われたカート・ローゼンウィンケルのライブを観てきました。今回はベースのダリオ・デイッダ (Dario Deidd) とヨースト・パトッカ (Joost Patocka) とのトリオ編成。ダリオとは1994年にイタリアのシチリア島で、ヨーストとは数ヶ月前アムステルダムでピーター・ビーツ(Peter Beets)との共演時に知り合ったそうです。
今回見たカートは黒縁眼鏡をかけていてトレードマークの帽子はなし。下の写真の頃よりも少しだけふっくらしてはいましたが、心身ともに健康そうな様子でお母さんはとっても安心しました(いつから母になった)。
トリオ編成だけあってコードもシングルラインも思う存分弾きまくるカートを堪能することができました。私が観たセットではカートのオリジナルは演奏せず、ミンガスやマイルス、クレア・フィッシャーやクリフォード・ブラウンといった選曲。アンコールを含めてちょうど1時間くらいのステージでしたが、1曲1曲が長く(確か全6曲)、異様な集中力で演奏されているので聴いているこちらも良い意味でクタクタ。いや、もう最高でした!
(上は7月2日の2nd showの様子。私が見たセットとは異なります)
今回はカートのポジション選択・移動をじっくり観察しながら聴いたのですが、あらためて彼はコードが本当に上手いと思いました。何処でどんなフレーズを弾いていてもその周囲に自分色のボイシングをたくさん持っているようでした。フィンガリングはコンテンポラリー系ギタリストの中ではわりとヴァーティカルな感じだなとあらためて思いました。
使用ギターは左下のWestvilleのシグネチャーモデル。アンプはFender Twin Reverbの2台体制。エフェクトはほぼかけ放しのディレイに加え、盛り上がってくるとElectro Harmonix HOG2を踏むという感じで、「盛り上がるとマイク・スターンがディストーションを踏む」みたいな様式になりつつありました(勿論カッコイイ)。足元に並んでいたのはLine 6 Helixのマルチエフェクター, Origin Effects Cali76のコンプレッサー, BOSS Super Octave, HOG2で全て。
ところでベースのダリオ・デイッダが使っていたエレクトリック・ベースには本当に驚きました。入場後、ステージ上にウッドベースを見かけなかったので、「あぁ、今回はエレベなのか。カートのギタートリオはウッドベースで聴きたかったなぁ…」などと思っていたのですが、実際ダリオのベースが聴こえはじめると「なんじゃこりゃー!!」な松田優作状態へ。ヘンなシェイプをした、ヘンな形のFホールのある薄いホロウボディなのですが、ウッドベースのような音がしていました。
勿論、完全にウッドベースな音ではないのですが、ウッドベースのようなアタックと弦のバウンド感。あんな楽器これまで見たことがありません。ウッドベースの持ち歩きに苦労しているジャズ系ベーシストにとっては新しい選択肢になるのではないかと思いました。スペインのバスク地方に工房を構えるホアキン・マルコ (Joaquín Marco) というルシアーによる、多分”Marcustico”というモデルだと思います。このページで紹介されています。
あと受付でピックをもらいました。渋谷ウォーキンプロデュースのものでしょうか。以前渋谷ウォーキンのロゴ入りオリジナルピックという記事で紹介したピックと音色は似た傾向で、形状はカートが愛用しているD’Andrea Pro Plec 351 1.5mmに近いです(本人がこのピックを使っているかどうかは不明)。
今回のカートのライブ、一言で印象を言い表すなら「円熟」でしょうか。これまでカートが獲得してきた表現、声、歌、音響世界が、秘められた熱いエネルギーを燃料に発火していく感じ。5月に見たパット・メセニーのライブにも円熟味を感じたのですが、メセニーのステージには強力に「アメリカ」を感じたのとは対照的に、カートのステージには「ヨーロッパ」を強く感じました。
かつてアメリカのジャズ・シーンに閉塞感を抱いてヨーロッパに渡ったジャズ・ジャイアンツがたくさんいたのを思いました。もしかするとベルリンに居を移したカートもヨーロッパで新時代のジャズに取り組んでいるのではあるまいか、などと思ったりもしました。