苦いもの、辛いもの、酸っぱいもの。いま私が好んで食べたがる食材は、子供の頃の自分は決して好んでいなかったものだと思います。
思いつくままに列挙するなら…
- 香菜(シャンツァイ、パクチー、コリアンダー)
- わさび
- 唐辛子
- ブラックコーヒー
- みょうが
- 生姜
- わらび
- ピーマン
- ネギ
- クミン
- ゴーヤ
- セロリ
- パセリ
- 大葉
- 大根おろし
- レモン
- 梅干し
こうしたものは、子供の頃、嫌いだったと思います。「タラの芽」や「大葉」の天ぷらを食べている大人を見て、あんたら何考えてんだ、と子供ながらに感じていたと思います。「不味いもの」を進んで食する大人たちは、見ていて不気味でした。麦茶と間違ってビールを飲んでしまった時など、大人は狂っているとさえ思いました。
その私も大人になり、下の写真に写っているような草がとっても好きになりました(上に列挙したものは全て現在の私の好物です)。
翻って、子供はどんな味のものを好むでしょうか。それはまず、甘いものでしょう。そして脂質や炭水化物が豊富なもの。
これをインターバル(音程)に置き換えると、子供が好む味のものは、8度(オクターブ)や完全5度に近いものではないかと思ったのでした。赤いコカ・コーラやホットケーキ、脂質たっぷりの濃厚なソフトクリーム。それらは私にあの安定度の高い、力強いオクターブや5度を想起させます。
苦味や酸味、痛覚(辛さ)は、やはりテンションノートを想起させます。ゴーヤはb9的なテンションだし、レモンは#11th。b7th/Major 3rd/natural 13/#9(増4度が2つ発生するあれ)を同時に鳴らすと何か「激辛」な世界。
テンションノートを多用するジャズ、そして不協和音程を積極的に使用する現代音楽は、味覚のアナロジーでいえば「過剰な苦味や酸味、辛さを伴うもの」と言えそうな気もします。
本格的にジャズに取り組みはじめた頃、私はオクターブと5度をあまり練習しなかった記憶があります。それらを避けていました。オクターブや完全5度は、自分にとって全くジャズっぽくないサウンドに思えたのでした。こってりしすぎていて、大袈裟で、押し付けがましく、ロマンティックすぎて、暑苦しく感じられる音程でした。
それが何周か回って、最近は「オクターブとか完全5度ってかっこいいな」と思うようになりました。ハード・ロックやヘヴィ・メタルのギタリストが多用する「パワーコード」というインターバル・スタックがあり、それは完全5度とオクターブの組み合わせなのですが、むかしはカッコ悪く思えたそれが「いい感じに」聞こえることがあります。
私達は誰もが、楽器を問わず、任意のスケール内のダイアトニック・ノートの様々な組み合わせを練習していると思います。2度、3度、4度、5度、6度、7度、8度(オクターブ)、9度、10度、11度等々。よく考えると、5度と8度は真面目にやってなかったなぁ、と思い、最近まじめにやっていました。
甘い食べ物は、普段好んで食べることは全くないのですが、つきあいで喫茶店でケーキなどを食べる時、「なんだこの違法な食べ物は」と驚くことがあります。先日、甘栗のモンブランというのを食べました。その時、その濃厚かつスローな甘みに「…こ、これは俺の心のサウンド・パレットに存在しない!」とあらためて衝撃を覚えたのでした。
もう何年も「パワーコード」を弾いていないジャズ系ギタリストは少なくないと思います。でも、あれはあれで良いものだと思います。あれを取り入れて何か演奏してみるのは面白いんじゃないでしょうか(カート・ローゼンウィンケルにはそういう感じの曲がいくつかありますね!)。