2015年9月3日、東京・武蔵野スイングホールで開催されたカート・ローゼンウィンケルのソロ・コンサートに行ってきました。
今回のカートはソロ・フォーマット。渋谷ウォーキンプロデュースのシグネチャーモデルのプロトタイプと思われる赤いギターとFender Twin Reverbが2台、右手側にはM-Audio Axiom AIR 61キーボードを配置。キーボード下には山ほどのペダルがあり、本人はヘッドセットを着用しボイスを重ねていました。
もしこれで足元に鍵盤があり背後の壁にROOSTERという文字が見えたらもはや鈴木よしひささんではないかという感じのポリパフォーマンスな雰囲気。カートはギターで時々ループを作り、右手のキーボードでベースやドラムを重ね、傍目にはかなりややこしい操作をこなしつつ一人音楽世界を生成。
カートが時折右手で叩くドラムセットが素晴らしく、いまループ用のリズムを作っています、という次元を越えて時には両手でノリノリに叩いていました。右手でキーボードを操っている時、左手はタッピングだけでフルート的な音色のギターを弾いています(エレハモのHOG2を使ったような音)。
ソロ・ギターでの演奏も2〜3曲あったように思いますが、ほとんどが10分以上の、陶酔感を誘うようなスケールの大きい曲でした(2曲目はFly Me To The Moonの断片が聴こえたような気がしたのは気のせい?)。カートの変幻自在な美しいコード・ボイシングを堪能できて嬉しかったですね。
そして今回カートが使用していたワインレッドのWestvilleギターはすごく良い音でびっくりしました。ダブル・カッタウェイの6弦側が少しだけ張り出しているようなデザインなのですが、他のライブで聴いたWestville Butterよりも個人的にはずっと好みの音でした。
会場やセッティングの影響もあるのかもしれませんが、今回の赤いプロトタイプはもっと深さと柔らかさがあり、かつ立体的なサウンドを発していたように感じました。ソロ・フォーマットだったせいもあるかもしれませんが、コードの低音側の分離が特に良かったように思います。エアー感もすごくありました。
センターブロックがメイプルのWestville Butterと、マホガニーのWaterはどちらも友達の個体を借りて弾いたことがありますが、聴いた感じでは今回の赤いプロトタイプが一番好み。デザインはダブルカッタウェイとシングルカッタウェイの中間ですが、演奏性とサウンドのバランスを取った結果でしょうか。
またヘッド裏にはオート・チューニング・マシンのTronical Tuneが装着されていましたが、変則チューニングの曲に変わる際にボタン一発でペグがグルグル自動で回転、かなり短時間でチューニングが完了。なるほどカートにとってこれは大切な機能なのだろう、とも思いました。
途中のMCでカートはこんなことを言っていました。
今日は来てくれてありがとうございます。ここにいることができて嬉しいです(…)ここしばらくの間、こういう(ソロ・フォーマットで)演奏をしています。ギター以外にも色々弾いていますが、問題ないですよね(→会場ちょっとウケる)。
こういう演奏をはじめてから、いつもとは違う音楽が聴こえるようになってきたんです。
この日のカートはとても自由で、良い感じにリラックスして演奏を楽しんでいるように見えました。ブルーノートやコットンクラブで見るカートとはまた違った雰囲気で、まるで「ホームパーティーで生演奏をやるから、よかったら来てみてよ」という感じのコンサートでした。
会場の武蔵野スイングホールはJR中央線・武蔵境駅前にある小さなホールで、収容人数は180席。補助席が出ていたので最大でも220席だったと思います。チケットは即日完売に近い状態だったらしく、入場できて大変ラッキーでした。ライブ終了後のサイン会では狭いエントランスに若者たちが長蛇の列。
観客の半分以上は、恐らく武蔵野スイングホールでのクラシック・コンサート等を定期的にご覧になられていると思われるシニア層の方々だったと思われますが、普段聴き慣れていないかもしれない(?)雰囲気の音楽に熱心に聴き入っている様子で、それがとても印象的でした。