先日、高校生の頃によく聴いていた曲が頭の中で鳴りました。Miles Davisが演奏する”Stablemates”です(なかなか演奏が難しい曲の一つですね)。
1956年リリースの”The New Miles Davis Quintet”収録で、他のメンバーはコルトレーン、ガーランド、チェンバース、そしてフィリー・ジョー。当時私が持っていたのは青いジャケットの6曲入りCDでした(Just Squeeze Me, There Is No Greater Love, How Am I To Know?, S’posin, The Theme, Stablematesを収録)。
そのStablematesを聴きたくなってiTunes Storeで検索したところ、6曲1600円のこのアルバムの他に「100 Jazz Masterpieces Vol.12」という「100曲入り900円」の「お得な」音源を発見。マイルス以外の様々なプレイヤーの演奏も入っています。選曲に何か意図があるのか出鱈目なのかは不明。
その「100曲入り900円」には上のアルバムからStablematesを含む3曲が収録されています。恐らく普通の経済原理から言えば、ここで6曲1600円のほうを選ぶのは、損で不合理なことなのかもしれません。
しかし私は6曲1600円の”The New Miles Davis Quintet”を選んだのでした。もう一度あの静かな印象のアルバムを通して聴いてみたかったこともあります。そして「100曲入り900円」のうち97曲はとりあえず興味がなかった。聴きたいのは”Stablemates”が収録された、青いジャケットのあのアルバムだけ。
当時の曲の並びで聴くほうがアルバムのコンセプトもよく伝わるし、Stablemates 1曲の聴き方にも影響があるはず(さらに言うとA面B面というものがあるレコードで聴くともっと良いのでしょう。レコードプレーヤーでも買おうかな? 昔、かさばるという理由でレコードもCDも処分したというのに!)。
音楽を購入する時、自分は「良い音楽を良い状態で味わいたい」と思っているのであって、「100曲入りのこれがお得」という精神とは無縁のはず。ちなみに類似の理由でiTunesやYouTubeの「垂れ流し的な連続再生」というのが苦手です(俺はフォアグラになるガチョウじゃないんだ!)。
勿論、特定アーティストのVerveレーベル時代のアルバム4枚(全曲)が入ったセットが1600円、といった場合は、そうしたものを買うこともあるのですが、意図がよくわからないコンピレーションアルバムのようなものを買ってもまじめに聴かないので、そういうのは避けるようになりました。
チャーリー・パーカーやグラント・グリーンのベスト100曲、のような特定アーティストの「音源お得セット」も、何度か購入したことがあるのですが、なんと後になってアルバム単位で購入しなおしてしまう事象が多発。「な… 何を言ってるのか わからねーと思うが… 」というポルナレフ状態でした。
食べ放題とコース料理の違いのようなものでしょうか。音楽については前者はないな、と感じます。安くて多ければ良い、というのは、私と音楽の関わりにおいてはほとんど意味がない論理なのだろう、と気付いたのでした。