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「テーマをいつも忘れてしまう病」への処方箋(普通のおくすり)

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アドリブはそこそこ弾けるようになったのに、スタンダード曲のテーマ(メロディ)を覚えるのが苦手だ、あるいは覚えてもすぐに忘れてしまう。そんなけしからん悩みを抱えているギタリストは少なくないという。だが安心して欲しい。実は俺も昔はそうだった。そして俺はその病を見事に克服した。今回はそんな俺の闘病の過程を紹介するー

と、ふざけるのはここまでにして、真面目に書いていきます。「テーマをいつも忘れてしまう病」はほとんどの場合、テーマのメロディとコードフォームとの関連がよくわかっていない、コードフォームが見えていない、というかそもそもコードフォームをあまり知らない、ということに起因していると思います。ただ丸暗記してもすぐに忘れます。

例えばCΔ7というコードがあるとして、下の5つの押さえ方は誰でも知っていないといけないものです(楽譜は全てクリックで拡大します)。知らないと不便ですし、多分ハンディキャップになるでしょう。これらの押さえ方を知らない人は、まずこれを覚えることからはじめます(3つ目が押さえにくい場合は無理をせず場所だけ覚えます)。

CAGED各ポジションで弾いたCMaj7

上のCΔ7たちは、「CAGED」(ケイジド)と呼ばれるギターの最も基本的な5つのコードフォームに対応しています。CAGEDとは以下の5つのフォームのことを言います。開放弦を含むこれらのロー・コードはお馴染みのはず。ジャズでこのまま弾くことはまずないコードですが、上のCΔ7の「押さえ方」は全部これらと関係があるので観察してみて下さい。

CAGEDの基本フォーム

さて、「C型」の押さえ方、その近くでは、例えば下のような基本的なCメジャーコードのボイシングが可能です。左からCΔ7(4 way close), C69, CΔ7(5度抜き), CΔ9(3度抜き), CΔ7(5度ボトム・Drop2), CΔ7(3度ボトム・Drop2), CΔ7(5度ボトム・Drop3)。これら全て、「CAGEDのC型」のフォームの近くで発生している押さえ方です。

ポジション、と言っても良いでしょう。C型以外の他のポジションでも、同様に6度や9度を足したり、その場所に基本的なDrop2/3コードが存在しないかを確認します。この5つのポジションは精通しておいたほうが良いです。

C型付近で弾いた様々なCメジャー系コード

ここまで練習したらあとは簡単。例えば初心者向けとされるKey in Cの”All of Me”という曲があります。その”All of Me”を彷彿させる3つの音(ドー・ソ・ミー、と下るメロディ)があるとします。そのメロディを上で説明した5つのCΔのポジションで弾いてみます。メロディに続くコードの部分は、コードフォームを意識するために練習としてあえて弾いてみます。

CAGED各フォームでAll of Meの最初の3音的なものを弾く

ちょうど12フレット分をシームレスにカバーできています。つまりCAGEDの中で知らないポジションがあると、運指が難しくなったり、不自然になったり、演奏中に突然指板が見えなくなってロストしたりということに繋がります。苦手なポジションは特に練習するのが良いと思います(※「D型」と「G型」を苦手としている人が多いような気がします)。

これでどんなメロディもメジャーコードの近くで弾けるようになりました。しかし曲にはマイナーセブンスとかドミナントセブンスとか色々なタイプのコードがあります。それらに対応するには、例えばC型のCΔ7の構成音を1個1個変えていって、他のコードクオリティに変えます。下は左からCΔ7, CmΔ7, C7, Cm7, Cm7(b5), Cdimとなっています(臨時記号がおかしなことになっていますが見なかったことにして下さい)。

C型以外のポジションでも、同じ変更を試します。よく使うお馴染みのフォームもあれば、あまり見たことないフォームもあるかもしれません。「これあんまり知らない」というのは弱点になっているので、そういうのは徹底的に練習して身体に入れます(抽象的に覚えるよりも実際の曲で、必要な時に使ってみるのが効果的だと思います)。

コードクオリティを変更する

これでどんなコード上のどんなメロディもCAGEDと呼ばれる5つの基本的なコードフォームの周囲で弾く、というコンセプトを覚えました。このコンセプトを使ってテーマ・メロディを最初から最後まで弾いてみます。下はそのコンセプトで”All of Me”のような曲を弾いた場合の例です。慣れないうちはそのポジションでコードのアルペジオをなぞったり、フィルイン的にあえてコードを弾くと覚えるのが早いと思います。

解説:1小節目は6弦8FルートのCΔ7(E型)、3小節目は5弦7FがルートのE7(A型)、5小節目は6弦5FルートのA7(E型)、6小節目は同じポジションでA7のHmp↓5(=D harmonic minor)のフレーズを参考までにあてはめてみました。こうやってメロディもコードもスケールも、ポジションを理解して、自分のコントロールが及ぶものに変えていきます。

1曲通して弾いてみる

上に登場した様々なコードフォームを知らない場合、マスターするのはそこそこ時間がかかると思います。しかしこの練習は継続するといろいろ良いことがあります。例えばアドリブ中にいつでもコードを入れたり、コード・ソロへの移行が容易になります。ソロ・ギターが弾けるようになります。アドリブが上手になります。良いことづくめです。

少しづつ、知っている曲・やりたい曲を題材にして挑戦してみると良いと思います。またテーマだけでなく、耳コピーしたフレーズもこれらのコードフォームと関連付けて弾く練習をします。Donna Leeのような速くて複雑なメロディも練習時は近くにどんなコードがあるかをよく考えます。こうやって覚えたメロディ・フレーズはそう簡単に忘れなくなります。


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