私のような凡人が日々抱く様々な、矮小な疑問。もしあの偉大なマイルス・デイヴィスがすぐそばにいて、ビール片手にそうした疑問をふと投げかけてみたら、どんな答えが返ってくるだろう。ビールを飲みながら妄想してみます。
ーマイルス、ここでこの音はあまり合わないかな?
俺はお前じゃない。お前のことはお前が決めろ。
ーマイルス、どうやったらあんたみたいにカッコイイいいフレーズが出てくるんだろう?
それは俺という人間がカッコ良いからだろう。お前のフレーズがカッコ良くないとしたら、それはお前という人間がカッコ良くないからだ。
ーマイルス、いくら練習しても上手くならないんだ。俺はどうしたらいい?
質問する奴は、大体既に答えを知っている。わざわざ俺に聞くな。
ーマイルス、曲を書いたから聴いてくれ! 自信作なんだ!
そのメロディは俺が書いたものと全く同じだ。40年前に頭の中で同じメロディを書いた。
ーマイルス、マイナーセブンフラットファイブが未だに苦手なんだけど、どう処理したらいいかな?
マイナーセブンフラットファイブの箇所では、マイナーセブンフラットファイブは絶対に弾くな。俺に言えるのはそれだけだ。
ーマイルス、腹に巻くだけで腹筋が鍛えられるスレンダートーンというのがあるらしいんだけど、そういうのどう思う?
あれは意外にいい。俺は買った。倒れるだけで腹筋ワンダーコアも俺は買った。お前は買わないのか?
ーマイルス、ショーンKのことをどう思う?
どうでもいいことを聞くな。お前らギタリストは沈黙を恐れるあまり、どうでもいい音を出すことが多い。弾きすぎだ。ガム食うか?
ーマイルス、ジャズっていつかこの世からなくなってしまうのかな?
なくなっても誰も困らない。ジャズがなくなって困るような連中が演っているのはジャズじゃない。必要なものだけが生き残る。ジャズだって必要なら生き残る。必要がなければ、生き残らなくていい。必要とされていないのに生き残っているとしたら、それはジャズじゃない。