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ジョージ・マクラフリン・山下の思い出

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ジョージ・マクラフリン・山下はお茶の間の人気者だった。ジョージはテレビ夕日の看板番組「偏向ステーション」の水曜ギタリストで、ニュースに「独特な甘いスキャットとギターでコメントを付ける」得意技を持っていた。

ジョージはどんな難解な経済ニュースにも、ドゥーリリリ・ダァルルル、とスキャットと華麗な速弾きフレーズでにこやかにコメントすることができた。私たちはそんなジョージが好きだった。ジョージは浅黒い肌のイケメンでもあった。

そんなジョージ・マクラフリン・山下(別名ジョージ・Y)に、経歴詐称が発覚した。ジョージはいつもの白いスーツに身を包み、片手にはIbanez GB-10を持ち、自らサンスプ(週刊音春)の編集部に現れ、様々な経歴詐称を認めたそうだ。

彼はバークリー音楽大学もジュリアード音楽院も主席では卒業していないことが判明した。卒業自体していなかった。というか入学さえしていなかった。そしてインドで修行したこともなく、ヒンドゥー教に改宗してもいなかった。

彼はスコティッシュ・アフロアメリカン・ジャパニーズの父と日本人の母を持ち、イングランドで生まれたとされていたが、実際は両親ともに日本人であり、埼玉県春日部市に生まれていた。本名は山下譲次郎。高校時代の彼の写真に現在の彼の面影はない。このためジョージには整形疑惑も浮上することになった。

週刊音春の記者はジョージに、これらの疑惑についてあらためて問い正した。するとジョージはしょんぼりした表情で、「それはダメだと思います。」と答えたそうだ。いまの気持ちをスキャットとギターで表現してもらえますか、とのリクエストに、ジョージは「ルルルー」と悲しげに歌い始めた。

それはジョージ・ベンソンの “This Masquerade” に似たメロディだったという。

俺達は、この仮面舞踏会の中で迷子になってしまった・・・

ジョージ・マクラフリン・山下はテレビから姿を消した。いま、私は思う。どんなに難解で複雑なニュースについても、自分の気持ちを素直にスキャットとギターで表現できたジョージ。何故彼は経歴を詐称する必要があったのだろう。

有名な音楽大学の学士号を持っていなくても、ジョージの価値は変わらないはずだ。整形は、していたとしても別に構わない。価値観は人それぞれなのだから。

ひとは時に自分を大きく見せたがる。権威主義に支配されたこの社会において、ジョージもまたステージに立つために自分の過去を偽ったのかもしれない。
 
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