日本でよく「コンディミ」と呼ばれるスケールがあります。2つのディミニッシュ・コードを組み合わせたスケールで、「半音・全音」という順番を繰り返すものです。英語圏では「Half Step/Whole Step Diminished Scale(HW diminished scale)」と呼ばれています。
なお同じ音列を「全音・半音」の順で弾くとディミニッシュ・スケール(Whole Step/Half Step Diminished Scale = WH Diminished Scale)となり、どちらも半音刻みで3種類存在します。
「コンディミ」をよく使うジャズ・ギタリストで個人的にすぐ思い浮かべるのはジョン・スコフィールドです。他にジム・ホールにテーマがコンディミでできている”Careful”という16小説の変形ブルースがあり、それも有名ですよね。
その「コンディミ」の起源は知りませんが、1944年にフランスのオリヴィエ・メシアン(1908-1992)という作曲家が「わが音楽語法」という著書で「移調の限られた旋法」の1つとして紹介しています。そして彼の作品には実際にコンディミをベースにした作品がいくつか存在します(「時の終わりのための四重奏曲」等)。
オリヴィエ・メシアン自身がコンディミの構成音からコードを生成して弾いている動画がYouTubeにあったので下に貼ってみます。
私がはじめてサント・シャペルを訪れたのは、11歳の少年の時だったと思います。それはとにかく「色彩」の体験でした。私は音楽が「色のついているもの」であることをその時理解したのです。このステンドグラスを眺めても、あれらの人物が誰なのかはすぐにわかりません。とにかく色に目が眩み、衝撃を受けて目を閉じざるをえないような感じです…(中略)
私はコードを聴く時、それに対応する色が見えます。目で見えるのではなく、頭の中で見えるのです。…これから弾くのは、わずかに灰色がかったブルー・バイオレットで、少しコバルトブルーとプルシアンブルー、モーブ(薄く灰色がかった紫色)・金・赤・ルビー・黒と白い星が適度に反射している感じの平行移動コードですが、支配的な色彩はブルー・バイオレットです。
ジャズ・ギタリストもコンディミ内に存在するトライアドを使って印象的なフレーズを弾いたりすることはあるのですが、ギターではなかなかこういうコードで弾くのは難しいですね。確かに色彩豊かです。というかこれはもはや病…いやなんでもありません(汗)。メシアンは熱狂的なカトリック信者なので彼が言及する色もカトリックや聖書に関係しているものが多いように思います。
コンディミに限らずシンメトリック系のスケールは、ジャズではどちらかというと「単色」的に使っているプレイヤーが多いのではないかという気がするのですが、本当は色々な色彩が隠れているのではないか、とこの動画を見てあらためて思いました。
オリヴィエ・メシアンは「鳥の鳴き声」を頻繁に採譜していたことでも知られています。自然界を観察して自身の音楽のヒントにした現代音楽作曲は他にもハンガリーのバルトーク・ベーラ等がいます。おもしろいですね。時には楽器を置いて、林や森を散歩すると良いアイデアが得られるかもしれません!!