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トライアドでいい。トライアドがいい。

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ジャズ(・ギター)における「トライアド」(三和音)という存在は少しだけ不憫な気がします。

ジャズの入門段階でもっと重要視されて、多くの時間が割かれても良いように感じるのですが、ジャズの基本的なコードは四和音のセブンス・コードとされ、まずその理解と習得から入ることが多いと思います。

ルート・3度・5度・7度(または6度)。この4音からなるコードがセブンス・コード。種類もメジャー・マイナー・マイナーメジャー・ドミナント・ディミニッシュ・ハーフディミニッシュ・オーグメント等がある。で、これらが「最も基礎的な単位」として扱われている。と言って良いはず。

そして9度から上の拡張音がテンション。テンションは「カラートーン」とも呼ばれるくらいで、ある意味「すっぴん」であるセブンス・コードにお化粧を施すものと言っても良いでしょう。セブンス・コードが基本であり、オントップでテンションが乗る、という考え方。7度(6度)は、カラートーンとは呼ばれない。

だが待ってほしい。トライアドは、トライアドは何処に行ってしまったのか。ルート・3度・5度の3音で構成されるあのトライアド。種類はメジャー・マイナー・ディミニッシュ・オーグメントの4種類(※自由なインターバルの組み合わせの3音コードをトライアドと呼ぶ場合もありますがここでは除外します)。

トライアドが馬鹿にされるのを見聞きしたことがあります。素朴すぎる。単純すぎる。簡単すぎる。退屈だ。等々。CΔ7でドとミとソだけ弾くなんてつまらない。ジャズなんだからもっとリッチな響きのセブンス・コードを。ついでに#11thを。それでこそジャズじゃないか、と。

いやいやいやいや。 “All of me” の最初の3音はCトライアドの第1転回形だし、セロニアス・モンク作 “Rhythm-A-Ning” の冒頭は2小節連続でまさかの根音形トライアドだったりする。これは私にとってはとっても美しい。そして言うまでもなくビル・フリゼールの演奏。退屈さのかけらも感じない。

ギタリストの場合、好き嫌い以前にトライアドをきっちり弾けない人も珍しくなかったりする。様々なスケールに詳しく素晴らしい演奏をする人でも、基本的なトライアドの全転回形をすぐ弾けない人は少なくない。多分トライアドに精通していなくとも普通にジャズっぽい演奏は可能だからかもしれません。

ある意味で精通していなくとも困らない、らしいトライアド。でも転回形を駆使して自然に連結されていくトライアドは本当に美しいし、さらにOpen Triad (Spread Triad) と呼ばれる「積んだ3音のうち真ん中の音を1オクターブ上に移動する」ボイシングは私には天上的な美しさに聞こえます。

以前カート・ローゼンウィンケルがクリニックで「テンションとかアッパーストラクチャーとか以前に、まずセブンスコードでいいんだよ」と言って、Drop 2のセブンスコードだけを伴奏に使ってBody and Soulを演奏していたけれど、さらに言えばトライアドだけでもいいはずだ。十分に美しいはずだ。

いや、トライアドがいいはずだ。セブンスコードにはない美しさがある。

ある程度経験を積んだプレイヤーは任意のスケールからトライアドを取り出してゴニョゴニョ…ということは、やる。けれども、それ以前に、本当に基本的なトライアドに立ち返ってみる。それは大事なことではないだろうか。と思ったりしたのでした。C Lydianというのは、D on Cのことなのだから。


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