レイクALSAという消費者金融のCMが流れるたびに、見入ってしまいます。4パターンほどあって、設定や演出がかなり凝っています。ウィリアム・ギブスンやフィリップ・K・ディックといったSF作家の世界を想起させます(映画「ブレードランナー」的な世界)。後半で聞こえる音楽のメロディーは、マイナーセブンスの分散だと思うのですが、シンプルで独特な寂しさがあっていいです。
「あ、新時代」という文字の後に続く、不気味な沈黙、その後に唐突に頭からはじまる4つ打ちのビートもいい。この沈黙にドキッとします。
上の女性が出てくるバージョンでは「開始します」と「レイクALSAが完了しました」というセリフが、台湾の観光名所のヘッドセットから聞こえてくる数十年前の日本語のようなイントネーションで、こういうレトロ感へのこだわりがすごい。最後の「レイクALSA」という文字は、恐らくこのロボットたちが起動した時のイメージなのだと思いますが、昔のテレビのブラウン管を想起させます。
(ブラウン管…もう知らない人もいる時代か…)
このCMは何か作品としていいなと思います。他の消費者金融のものより断然いい。ただ不思議なのが、もはや生身の人間は存在せず、電子化された人類の記憶を頼りにAIが人間的な環境を模倣・生産している感じの世界らしいのですが、こうした世界であってもなぜ人間の形状や顔にこだわるのか。カードなんかとっくにないだろうし、そもそもロボットは人型ではないような気も。などと想像力をかきたてられる内容です。