ドラマーのアントニオ・サンチェスが、9/11(アメリカ同時多発テロ事件)についてのドナルド・トランプとバラク・オバマ両氏のツイートを比較して、「同じ事柄に対する、微妙に違うアプローチ」(Slightly different approach to the same thing)と揶揄していました。メキシコ出身のサンチェス氏、トランプ大統領への憤りを一時たりとも隠しません。取り上げられていたのは、この2つのツイートの違い。
17 years since September 11th!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) September 11, 2018
トランプ: 9/11から17年!
We will always remember everyone we lost on 9/11, thank the first responders who keep us safe, and honor all who defend our country and the ideals that bind us together. There's nothing our resilience and resolve can’t overcome, and no act of terror can ever change who we are.
— Barack Obama (@BarackObama) September 11, 2018
オバマ: 我々は9/11に失った1人1人を忘れまい、我々を安全にしてくれる第一応答者に感謝し、この国と、我々を1つに束ねる様々な理想とを擁護する人々全てに、敬意を払い続けるだろう。立ち直ろうとする我々の力と決意が克服できぬものなど何もない、そしていかなるテロ行為も我々を変えることなど決してできぬ。
ソウルの女王、アレサ・フランクリンが亡くなった際も、この2人のツイートが比較され大きく話題になりました。
The Queen of Soul, Aretha Franklin, is dead. She was a great woman, with a wonderful gift from God, her voice. She will be missed!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) August 16, 2018
トランプ: ソウルの女王、アレサ・フランクリンが、亡くなった。彼女は神から素晴らしい声を贈られた、グレートな女性だった。寂しくなるよ!
Aretha helped define the American experience. In her voice, we could feel our history, all of it and in every shade—our power and our pain, our darkness and our light, our quest for redemption and our hard-won respect. May the Queen of Soul rest in eternal peace. pic.twitter.com/bfASqKlLc5
— Barack Obama (@BarackObama) August 16, 2018
オバマ: アレサはアメリカン・エクスペリエンス(アメリカで生きること)の定義に貢献してくれた。彼女の声に、我々は自分達の歴史を、その全てを、あらゆる陰影 ー 我々の力と我々の苦痛、我々の闇と我々の光、我々の贖罪への模索と、我々が苦労の末に得た尊敬 ー の中で感じることができた。ソウルの女王が永遠の平和に休息されんことを。
語りのスタイルがまったく違う2人です。多くの人々は、世界的な不況も手伝ってか、辛抱強さを失い、簡潔で直接的なものを好むようになった。こういう長そうなブログ記事なども、冒頭に「ざっくり言うと」などといった親切な見出しを置いておかないと、読まれないことが多い。そういう状況では、トランプ氏を支持する人が多くてもあまり驚きません。
話が長いと、要点をまず言え、などと言われたりします。効率よくやれ。能書きはいい、結果を出せ。理想はいい、現実だ。細かい表現はいい、踊らせろ。3年後じゃない、今だ。
何か映画「バード」で見たビバップの衰退の時期を思い出します(チャーリー・パーカーがR&Bの台頭にガクッと肩を落としていた姿が目に浮かびます)。音楽における「感性と理論」の対立にも似ているような気がします。人々は、地道に何かを積み上げることに疲れているのか…
ドナルド・トランプのフレージングは、ぱっと見た感じ、ジム・ホールのそれに似ているような気もします。でもジム・ホールはオバマのように語ることもできる。それにトランプの語りは、大脳辺縁系を鷲掴みはするものの、美しさはない。わかりやすいけれど美しくはない。そこは大きい違い。
時々思うのですが、オバマ氏がドナルド・トランプ的なフレージングのスキルを獲得して(というか、既に持っているとは思うのですが)戦略的に使い分けられたら、かなり強力な大統領になれるんじゃないか。
その逆はどうだろう。トランプ大統領が、頭の中は今と同じままで、オバマ的なスタイルで語るようになったら。その時はかなりヤバい。そんな時が来たら、世界はガチで存亡の危機に瀕しているに違いない(既に瀕しているという話もありますが…)。
リツイート数だけ見ると、オバマ元大統領のツイートのほうが人気。でもかりにいま大統領選があってこの2人が戦うとしたら、どちらが勝つだろうか。私が米国人だったら、勿論オバマに投票するけれど、最終的にトランプが勝ってしまいそうな気がしています。この世界に希望は、明日はあるのかーー