Drop 2 ヴォイシングを制する者はジャズギターを制する。と、そんなことは誰も言っていないのですが(笑)、個人的にこういう基礎的なことが本当に後々まで効いてくることを痛感しています。これが全てではないにしても、これに精通していないと話にならない局面はたくさんあるのではないでしょうか。
そしてたまに耳にするのが、Drop 2は4つの転回形と3つの弦セットの合計で1つのコードタイプにつき12個のフォームがあり、えーとメジャーとマイナーとドミナントセブンスとマイナーセブンフラットファイブとメジャー#5とマイナーメジャーセブンスとかあるから少なくともx6で72個のフォームがあり俺はジャズギターを諦めた。という話です。
いや、確かにいっぱいあるのは事実だとしても、全てを一気に「丸暗記」しようとするからいけないのではないか、と思うのです。
例えばです。これはたぶん誰でも知っているはず。5弦ルートのCΔ7のルートポジション。素敵なサウンドではないかもしれないけれど、絶対に見えないといけないフォームのひとつ。
次のこれは、4弦ルートのCΔ7。5度からはじまる第2転回形。
次のこれは、6弦ルートのCΔ7。これも5度からはじまっていて、1オクターブ違いなだけで音名は上と同じ。
これら3つをバラバラに、やみくもに暗記しようとするから「大変だー」と思うのではないか。というか、私がそうでした。本にいっぱいこういうフォームが書いてあって、一度は挫折しました。でも結局、それは丸暗記しようと思っていたからダメだったんだと思います。
ある時、気付いたのがこういうことでした。いろいろ練習しているうちに、法則を見つけたのです。例えば5弦ルートのCΔ7のルートポジションのうち、黒丸の部分だけを残し、赤丸の部分を1オクターブ上に移動させたらどうか。あら、4弦ルートのCΔ7、第2転回形ができちゃった。
同じように5弦ルートのCΔ7のルートポジションのうち、黒丸の部分だけを残し、赤丸の部分を1オクターブ下に移動させたらどうか。あら、6弦ルートのCΔ7の第2転回形ができちゃった。
Cのダイアトニック・セブンス・コードをさらってみよう…(譜面はクリック・タップで拡大します)
と、こうやって考えながら覚えたほうが効率的で、しかもCΔ7ならCΔ7で一気に周囲のちょっとだけ広い音域で構成音を見られるようになったのでした。
勿論、転回形もやります。他のコードタイプもやります。でも頭カラッポで丸暗記するんじゃなくて、考えながら、音を聞きながら、何らかの法則を発見しながら練習すると、すごく速かった。楽しくなった。この例に限らず、こんな感じで「なるほど!」と自分の頭で考えながら練習をするようになったのが、私のギター人生におけるブレークスルーだったように思います。そしてこういう発見は今でも続いています。
今ではコードが山ほど羅列されているテッド・グリーンの有名なコード本などを楽しく開くこともあるのですが、ジャズギターをはじめた学生の頃、そういうのはもう見るだけで気絶しそうになりました。こんなの覚えられるわけないだろ、と。実際、しばらくギターをやめたこともあります。
覚えないといけないことがいっぱいあっても、一度に全部覚える必要はないのだし、実際に自分の声として使えるようになるのは少しづつだし、山ほどたくさんのことを浅く覚えても全く役に立たない。でも自分の頭で考えて理解したことは、小さいものであっても確実に使いこなせる表現手段になると思います。結局それを積み重ねていくしかないのではないか。
I fear not the man who has practiced 10000 kicks once, but I fear the man who has practiced one kick 10000 times. – Bruce Lee
私は1万種類のキックを1回だけ練習した男は恐れないが、1種類のキックを1万回練習した男を恐れる。ブルース・リー