FIFAワールドカップ2018のベルギー対日本戦を見ました。結果は3-2でベルギーの勝ち。
これについて、2点も先取したのにその後3点返されるなんて赤っ恥だ、という感じの意見も目にします。
それは違う、と私は思いました。本来は3-0で負けて当たり前、くらいの相手に対して、知的な戦略とそれに基づいた努力を重ねた結果、前半に2点を押し込むことができた。これこそが評価されるべきであり、この2点を入れるために日本には8年間もの歳月が必要だったに違いない、と思ったのでした。
私は普段ほとんどサッカーを見なくなりました。それでも10年以上前にサムライブルーがワールドカップに出場した時のことや、当時のJリーグの試合をたくさん覚えています。当時はサッカーが流行したこともあって、今よりテレビで見ることが多かった。
今年のロシアワールドカップでの日本代表の戦いを見ていてまず思ったのは、
えっ日本ってこんなにうまくなってたの?
ということでした。縦のパスが通る。これがまず10年以上前の日本人サッカーでは、滅多に見られない光景でした。ボールの支配率も高い。ミドルシュートも出てくる。何よりボールのコントロール精度が上がっている。ゲーム中の布陣の予測も精度が高い。こんなの日本じゃない…(何様意見で恐縮ですが、素直な感想です)。
私の記憶の中の日本サッカーとは、縦のパスが全く通らず、始終ボールを後方に回し、横に回し、また後方に回した挙げ句、ひとたび個人技に秀でた相手プレイヤーにボールを取られたら為す術もなく、死に物狂いで走り回って最後はグラウンドに寝そべって泣く、という絶望以外の何物でもないものでした。
それから約10年。浦島太郎のように久々に真面目に日本代表の戦いを見ていたら、驚きました。日本はこんなにうまくなっていたのか、と。チームとしての戦い方はもちろん、大迫選手や乾選手等の個人技も驚きでした。日本にもこんな動きをするプレイヤーが出てきたのか、と釘付けになってテレビを見ました。
今回の日本代表について、やはり勝負事なので、いろいろな文句を言う人がいる。それは至極全うかもしれない。でも、誰かがちゃんと彼らに伝えたことがあっただろうか。伝え続けてきただろうか。メッチャうまくなったよね、と。誰か言ってあげたんだろうか。心配になりました。それは、誰かが言うべきだ、と。
自分は四六時中、自分自身と一緒にいるので、自分に対して客観的になることができません。以前よりどれだけ賢くなったか。大人になったか。考えを変えられたか。きれいになったか。優しくなったか。ギターが上手になったか。そして、サッカーが上手になったか。自分ではわからない。自分は自分に対して近すぎるので、評価できない。それを伝える使命を担っているのは、外部の人間であるはず。
それはサッカー協会であり、メディアであり、そしてファンの役目だと思います。
日本のサッカーは、ものすごく成長していた。それは素人の私でもわかりました(普段サッカーを見ていないという点では玄人よりもよくわかったと思う)。今回ベスト8に進むことはできなかったからといって、何も得られなかったわけではないはずだ。言い方は悪いかもしれないが、3-0、いや5-0で負けても何らおかしくない相手に3-2まで持っていった。これは誇るべき成果でしょう。
ただポーランド戦だけは、ちょっと昔のJリーグを思い出しました。天候が過酷すぎたのでしょうか。でもそれはポーランドにとっても同じ。あの試合の調子の悪さは少し不安が残りましたが、ベルギー戦では持ち味を全て出せた。本田のフリーキックも決まっていておかしくなかった。しかしベルギーは、ほとんどまぐれのように見えるヘディングも決まってしまった。
何が足りないのか…と絶句していた西野監督。でも、あと何が足りないのだろう、と言えるようになるまでに8年かかっても全く不思議ではないはずでしょう(どんな分野でも)。8年前は、何が足りないのか以前に、全てが足りないと言っていいレベルではなかったか。
世界との壁はこれほどまでに厚いのか、やはりベルギーはそう簡単に勝てるわけではないよな…と、試合を観た後はなんとも言えない落胆を経験はしましたが、本当の現実を見ることができた、という意味で、素晴らしい試合だったと思います。現実から目をそらすような試合、試合評がずっと続いてきた中で、今回の試合は、超えるべき現実の姿を明確にしてくれたように感じます。