楽器の演奏が上手になったり、即興演奏に磨きがかかる過程を「線」で現すとしたら、たぶん 下のようなものではない 、と思います。右肩上がり。違う。こんな成長をする人は稀。もしかしたらパット・メセニーとかジュリアン・ラージはこうだったのかもしれない。でも普通はこうではないと思う。
ではこんな感じでしょうか。アップダウンを繰り返しつつ、少しずつ全体が向上していく。この線のほうが、上の「右肩上がり直線」よりも現実に近いような気は、します。
ただ、個人的にもっと近いのは、下のような線ではないかと最近よく思うのです。螺旋です。ぐるぐるぐるぐると、回転しながら上昇する。
これ、どういうことかというと、何らかの課題(Subject A)が存在するとします。何でもいいです。例えば「ブルース」でもいい。「枯葉」でもいい。「Drop2」とか「トライアド」でもいいでしょう。ある課題を頑張って練習します。そのあといろんな他の課題をやりつつ、時間が経ってから、最初の課題(Subject A)に戻ってまた練習します。
するとその課題についての理解、熟達が以前よりも深くなる。このサイクルを繰り返すほどに理解が立体的になる。同じ「A」に「A’」というレイヤーが加わり、さらに「A”」というレイヤーが加わっていく。最初は平面、2次元的だったものがだんだん立体的に見えてくる。以前取り組んだものは全く無駄にはなっていない。
トライアドで言うなら、サイクル2巡目では転回形をマスターする。4巡目ではスーパーインポーズの使い方に挑戦。ブルースなら最初はマイナーペンタ1発だけど2巡目ではメジャーペンタとマイナーペンタをミックス。3巡目ではTwo-Fiveを随所に。4巡目では4小節目・8小節目にドミナント・モーション…等々。5巡目では小節線を超えた表現や変わったターンアラウンド…
成長とは、たぶんこういう過程ではないか。だから多少のアップダウンは気にしないでいいと思うんですね。停滞したからといって落ち込む必要はないと思います。それは再び「A」に戻り、その理解を深めるために必要な寄り道である、と考えると結構いいんじゃないかな、と思います。
そして寄り道の途中には、課題Bがあったり課題Cがあったりして、やがてそれらも同様に全て深くなっていく、という考え方。同じ課題、同じテーマに何度でも戻ってくることも大事だと思います。1回やったら終わり、ではないと思うのです。
成長とはこういう螺旋状の運動、プロセスを経て、複数の次元、ディメンションを獲得していくこと、積み上げていくことではないでしょうか。背が伸びるとか、山の頂点に登るとか、そういう考え方よりも、こちらのほうが自然かつ理想的ではないか、と思ったのでした。