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拙者は世話になった

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外国人とビジネスメールをやり取りする時、私の職場環境では英語です。それがお互いの共通語であることが多いからです。多くの方がそうでしょう。

ある時、私のカウンターパートの人から、日本語でメールしてもいいか、と聞かれました。彼女は中国の方なのですが、日本語を勉強しているということでした。これは、断る理由がありません。

その彼女のメールは面白いものでした。例えばこんなふうにはじまったりします。

世話になっとります。

「お」が抜けているだけでかなり面白い。手垢のついたフレーズでも半拍ずらすだけで新鮮にサウンドするあの感覚。日本語って難しいな、つか、ホント面倒くさい言葉だなぁ、とも思います。「世話」と「お世話」の違いも面倒ですが、そもそもメールの冒頭にそんなイントロのようなものを付ける慣習も面倒。既に関係が出来上がっていれば、英語なら “Hi” で終わりです。

その後も彼女はブロークンで面白い日本語を使ってメールをよこし続けてきたのですが、最後はこういう内容でした。

社内変動の必要で、今後はタブログ様の通信役は、拙者からCathyさんへ変更したいと思います。
Cathyさんは拙者と違い、日本語を使わず、今後は…

もうコーヒーブーッって吹きましたw 拙者ってあんた、そんな表現どこで覚えたんだ! 忍者ハットリくんとかで覚えたんだろ! ニンニン!

学生の頃、ジャズをやりはじめてフレーズをコピーしたけどどうもうまく自分の表現の中に入ってきてくれなくて悪戦苦闘していた時期のことを思い出しました。

とはいえ「世話になっとります。」も「拙者」も、それによって彼女が何を言いたかったのか、なぜそういう表現を使ったのかは十分に理解でき、その意味ではメッセージはきちんとこちらにも伝わっています。正しい日本語とか、正しい敬語表現という意味では間違いがあるとしても、これが音楽的な表現だとしたら、ぎこちないものではあっても、間違っているわけではない、いやむしろ面白い、と思いました。

というわけで、返信。

拙者も、世話になりました。


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