Quantcast
Channel: Jazz Guitar Blog
Viewing all articles
Browse latest Browse all 927

パンとバター、米と納豆

$
0
0

ハービー・ハンコックがマイルス・デイヴィスに「バター・ノートは弾くな…」 (Don’t play the butter notes)と諭されたという、有名なエピソードがあります。これは一時「ボトム・ノート(ルート)は弾くな…」と言われたのではないかという説も流れたのですが、真相は「バター・ノート」だったようです。バターのような音。

ではその「バター・ノート」とは何を意味するのでしょう?(00:56〜)

マイルスが私に言ったんです、「バター・ノート」(バターみたいな音)は弾くな、と。

バター・ノート? それは何のことだろう…?

しかし、それはマイルスから出てきた言葉です(だから何らかの意味がある)。

私は、それは「明白すぎる音を弾くな」という意味ではないかと考えました。

バターは「脂質」を意味します。当たり前のことですよね。

最も明白なのは、コードの3度と7度です。それらはコードの性質(nature)を定義するものだからです…

パンが1度と5度だとしたら、3度と7度がバター。米が1度と5度だとしたら、3度と7度が納豆(もしくは卵)という感じでしょうか。

コード・クオリティ、という言葉があります。それはマイナーかメジャーか、ドミナント・セブンスかメジャー・セブンスか、などといったコードの属性の違いを指します。コードの「アイデンティティ」に関する話です。この「アイデンティティ」は、ビバップの時代の表現と大きい関係があり、そこからの脱却を考えていたマイルスにとってはちょっと鬱陶しいものだったのでしょう。

「C」で何か弾くとする。でもそれはCのどんな様態なのか。C7なのか、Cm7なのか、はたまたCMaj7+5なのか。すぐには決めてほしくない。それを決めることが特に重要なわけでもない。マイルスにはそういう思いがあったのだと私は思います(この発想は後のポリモーダリティに繋がるものでもあったはず)。

シングルライン・ソロでコード進行を表現をする時、3度と7度をきちんと強調できるかが大事だったりします。それは勿論大事なことで、特にビバップ的なフレージングでは大事なことではあるとしても、マイルスが没してから27年が経過した今、何が何でも3度と7度を表現しなければならないのだ、という言い方には、やや疑問を覚えることはあります。それは、大学受験予備校の授業のような内容でしょう。

ただ、3度と7度を避けた表現をするためには、3度7度を徹底的にマスターしている必要があるのも事実。表を知らなければ裏のことはわからない、という気もします。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 927

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>