インタビューをする側の人間は、少しバカなくらいがちょうどいいのだ、と聞いたことがあります。何故なら何でも色々と「知っている」立場の人間は、自分が当たり前と思うものを聞かないことがあるからです。
以前このブログで、フランスの最高にカッコいいギタリスト、ロメイン・ピロン氏にインタビューさせていただきました。
とても面白い内容になったと思うのですが、それは私が聞き手として優れていたからではなく、少しバカだからです。そしてそのくらいの人のほうが、いいお話を聞くことができるのではないかと思います。
だがあえて言おう。物事には限度というものがある。以下は2009年、フランス・ニースのジャズ・フェスティバルでカート・ローゼンウィンケルが受けたインタビューの内容である。
カート・ローゼンウィンケル、あなたはフランス語を話さないのですか?
KR: すみません、話しません。ちょっとね。ちょっとだけ(仏語で)
コンサートの時に、後ろ側に太陽がありましたが、あたたかすぎはしませんでしたか?
KR: ちょっとあたたかかったけど、大丈夫だよ〜!
演奏している時は何も感じないわけですね?
KR: そうだよ、その通りだ
なぜあなたはその帽子を…それはあなたの外見の一部なのですか、その帽子は?
KR: ああ、僕はいつも帽子をかぶってきたからね…僕はただ帽子が好きなだけなんだ…だから、かぶっている…ハハ…ワハハ…
あなたはギタリストですが、作曲家でもあるんですね?
KR: そうだ、そうだ
今日私達が聴いたのは、あなたの曲だったんですね?
KR: 違う、今日演奏したのは全部スタンダード曲です、全部ジャズのスタンダードです、このプロジェクトはスタンダード・トリオですから、僕の曲は1曲もやりませんでした
即興はしなかったんですね?
KR:い、いや、僕たちは即興しました、ジャズ・スタンダードを基に。伝統的なジャズの文脈でね、僕たちは曲を演奏して、曲を素材に即興したんです
では、今日私達が聴いたのはインプロヴィゼーションだったのですね?
KR: ええ、まったくその通りです
信じられない、なぜならとてもメロディックだったからです
KR: おお、ありがとう
それに伝統的なジャズでもありました。あなたの影響は何ですか?
KR: バド・パウエル、チャーリー・パーカー、マックス・ローチ、マイルス・デイヴィス、ブッカー・リトル、エルモア・ホープ、そこに座っているソニー・ロリンズ、あとジョー・ヘンダーソン、ウェイン・ショーター
たくさん影響を受けたんですね
KR: イェー…
でもいつも同じスタイルなのですね?
KR: 違う! 僕はいつもいろんなスタイルの、世界中のアーティストに影響を受けてきたんだ、フラメンコとか、ショスタコーヴィッチやショパンのようなクラシックとか、ヒップホップとか…多くはジャズだけど…いろんな音楽に影響を受けてきたんだ
あなたはモダン・ジャズをやっているつもりなのですか?
KR: 何!?
あなたはモダン・ジャズをやっているつもりなのですか?
KR: ぼ、僕は…古典的なジャズをやっているのですか?
KR: 僕は… モダン・ジャズ(現代的なジャズ)をやっていると思う、その質問に答えるのなら…
演奏中のあなたの顔を見ました、あなたは音楽に没入しているように見えましたが、演奏中、あなたは夢を見ているのですか?
KR: わは…(笑いをこらえる)
演奏中は何を考えているのですか?
KR: 時には、演奏中に何を夢見ていたか覚えている時もある、時々はね、時々、様々な感情のことを考えていたり、人々のこととか、バド・パウエルのこととか演奏中に考えていることがある、バド・パウエルがピアノを演奏する姿を視覚化したりね、すると少し演奏が良くなるんだ、それがひとつ、あとはね、僕が「宇宙」と呼んでいるものと接触しようとしているんだ、そのへんにある感情、精霊みたいなもののことだけど…
それはあなたの顔に見えない、見えなかった、あなたの顔に見て取ることができました。
KR: …オーケー…w
あなたは繋がっていたんですね?
KR: Yeah…(笑)
あなたはどこに住んでいるんですか?
KR: ベルリンに住んでいます、ドイツの。
ひどい…ベルリンに住むのって最悪じゃなくないですか? そう思いませんか?
KR: 僕はベルリンが好きだよ!
ドイツ人はどうですか?
KR: グレートだよ!ファンタスティックだよ! ベルリンは大好きだよ、小さいコスモポリタンの街だよ、心が開かれた人達がたくさんいるし、多様性があってダイナミックなんだ!
でも何故ですか、何故あなたのようなジャズマンが住んでいるのですか? なぜベルリンに住んでいるのですか、なぜそのような選択を?
KR: ニューヨークに長く住んでいたんだけど、その後、当時の妻のいるスイスに移住して、その後ベルリンで教授職のオファーをもらったんだ
この(ニースの)フェスティバルに来るのははじめてですか?
KR: いや、すごく昔にゲイリー・バートンと来たことがあるんだよ、1992年だったかな、たぶん。それ以来は来ていなかったんだ。ここは美しいね!
それはスタート、初めての体験だったのですね?
KR: ああ…素晴らしい場所だよ! 僕たちは木曜日に来たから、ちょっと落ち着いて遊びに行く時間があったんだ。
あなたは他に2人のミュージシャンと来ました、バッテリーとバスとともに(注:仏語でドラムスとベースのこと)。しかしあなたはもっと大人数での演奏もするようですね?
KR: クインテットで演奏することもあります、最新アルバムはクインテットでした、サックス、ピアノ、ベース、ドラム、ギターでした。それにしばらくカルテットでもやっていました、去年とか。でもトリオはいつも大好きなので。だから今回はトリオでやってます。
今回あなたの演奏を聴けて良かったです、カート。ニースにようこそ。
KR: ありがとう。本当にありがとう!
このインタビュワーは解雇されるべきである。