ある夜、唐突に思ったのでした。ダメなアンプが欲しい。ローファイな音を出す、安い、オモチャのようなアンプ。スペック、音質は度外視。なんというか、ちょっとかわいい感じの奴。ということで、翌日にはこれをゲットしていました。 Danelectro HoneyTone N-10というアンプ。9V電池駆動、AUX端子なし。ツマミはVol, Tone, Overdriveのみ。
むかしのアメリカの家電製品みたいな外観です。カリフォルニアのハイウェイ沿いのダイナーに置いてあるキッチン用品みたいな感じ(LINE6 DL-4もこういう路線のデザインだな…)。これがいいんです。ターコイズブルーみたいな色。これまたカリフォルニアで売っているアクセサリーのような。
生意気にも16種類のセッティングがマニュアルに掲載されています。小宇宙。スピーカー回りのデザインは、燃費の悪いデカいアメ車みたいな感じ。音もデカい!
音は、「ジャズで使えるいい感じのクリーントーンを出したい」という方にとっては、微妙なのかもしれない。でもこのアンプ、そういうのじゃないんです。歪んだ、チープな、ダメな音 を出すために手に入れたのです。そして、その意味ではかなりいい音を出すアンプ であり、思惑通りの製品で満足しています。
このアンプ、下のお兄さんの動画では「ミニアンプのワースト3」にランクインしています。
ダメなミニアンプのワーストスリーを発表します。まずダンエレクトロのハニートーン、N-10だ…ベルトに付けられる小さいクリップがあって、プラスチック製で50年代の製品みたいなんだけど、音は良くない、すごいでかい音にはなるんだけど、これはダメ、ダメダメダメ…
いやいやいや。わかってないよ。あんた、わかってねぇよ… このダメな音、No no no noな音がいい んじゃないか! 洗練された和食やフランス料理じゃない。アリゾナのダイナーで食うメイプルシロップたっぷりの、身体に悪いパンケーキ。そういうアンプなんだ、これは。
ある意味、エフェクター的な存在かもしれません。個人的なことですが、「整ったいい音」に疲れる時があります。価値観が変わってきているのかもしれません。音楽は、楽器は、必ずしもそういう音じゃなくていいのではないか。ハイファイで、クリーンで、粒が揃っていて、美しい音。そういう音が全てだろうか。
ローファイなマイクを通した、AMラジオから流れてくるような解像感のギターの音。それをカセットテープに録音したような音。そういう音が主役の音楽があっても、いいんじゃないのかな。
さらに言うと、表現者さえダメでもいいのではないか。完成されていない人が、あるいは完成という価値観とは無縁の人が、安い楽器で安い音を出す。そういう音楽、最近あまりないなぁと思います。音楽の魅力は、音質や超絶技巧とは基本的に関係がないはずです。
英語に”Crap”という言葉があります。ガラクタ、みたいな意味で、アマチュアバンドが適当な演奏をしているのを指して、ひどいもんだ、あれはcrapだ、帰ろうぜ、などと言ったりします。でもガラクタにはガラクタの魅力があったり、しませんか。
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