ヘヴィメタル・ギタリストのザック・ワイルドがMusicradarの記事で面白いことを言っています。「本当に好きじゃないのなら、やらなくていい。本当に好きなものだけやれ」という内容です。
何を学びたいかが大事だ。チキン・ピッキングとか弦飛びとか、そういうサウンドに魅力を感じなかったら、気にしなくていい。俺はジョー・パスみたいなジャズ・プレイヤーが大好きだ、彼等はバカげているほどの超絶技巧を持っている、でもメロディック・マイナーのようなスケールは俺が演奏するものにはあまりフィットしないんだ。だからブルースやロックのリックにより重点を置いている。
ジョニー・ウィンターが、クラシック・ギタリスト達は好きかって聞かれて、彼等がすごいミュージシャンなのは間違いないが、自分が本当に感動して心奪われたのはブルースだ、って言っていたのを覚えている。ジョニー・ウィンターが座ってバッハを練習しているのを想像してみろよ…俺なにやってんだ、って彼は思うだろうよ。
自分が弾いているものを本当に好きになること、自分が感動するものだけを弾くことだ。食べ物と同じだ、生魚や寿司が好きでない人もいる、それは全然OKなことなんだ。魅力を感じていないものを座って学ぶ必要があるのかい… そんなことをしても何も良いことはない。同じことは「レッドハウス」のリフを覚えようとしている13歳のヘヴィメタル・キッドにも言える、彼等には退屈なものに思えるかもしれないし、ならスリップノットを弾けばいいんだよ!
ザックがジョー・パス好きというのは驚きましたが(同記事によるとマクラフリンにもかなり影響を受けたらしい)、やはり聴いて「これすっげー、カッコいい」と思っても、必ずしも自分が本当に弾きたいものと一致するとは限らないのが面白い。メロディック・マイナーは自分の音楽には合わない、という意見も、この人は自分の音楽を持っているな、という感じで好感が持てます。
コンテポラリーなジャズギターから入った人は、B.B.キングなんかどこがいいのかわからない、という人も多いし、反対に長年ウェスやグラント・グリーンを中心に聴いてきた人はラーゲ・ルンドやベン・モンダーのサウンドにはほとんど惹かれないかもしれない。常識だから、あるいはみんながいいと言っているから、という気持ちでやってみても得られるものはない、というのは同感です。
すごーく好きだ、けれど自分が演奏したい音楽ではない、ということもよくあるような気がします(そのことに気付くまでかなり時間がかかることもあり、これは少し厄介)。ハーモニック・マイナーってどこがいいんだよ…と思いながらそれを練習しても、良いことはほとんどないのでしょう。
ジャズをやっていてコルトレーンが嫌いだ、ということはほぼありえないように個人的には思うのですが、”Giant Steps”が心底好きでやりたい曲でなかったら、やる必要はないだろうし、やっても得られるものは少ないんだろうな、と思います。