ギター・デュオでの演奏は楽しいものですが、グルーヴとハーモニーを提供しつつソロイストと絡むようなコンピングは難易度が高いと思います。Jens Larsen氏(YouTube Channel)というオランダのYouTuber/ギタリストが「ギター・デュオにおける5つのコンピング・アプローチ」を紹介していて、それぞれの長所・短所がわかりやすくまとめられていました。
大体こんな風に演奏・説明されています。
【普通のコンピング】
1〜4弦中心に、Drop2やDrop3のフォームでトップノートをハーモナイズ、テンションを入れ内声で動きを出す。バンドで演奏しているのと同じ方法でリズミックにバッキングする。空間が生まれるため、ハーモニーの自由度があり、ソロイストとインタラクトしやすい。短所は、グルーヴを生み出すのが難しいところ。
【2レイヤー・コンピング】
ルート入りDrop2/3ボイシングのコードを使用、ピアノの「ベース+コード」を模倣する感じ。Larsen氏によるとグルーヴは低音と高音の組み合わせから生まれやすいとのこと。ライドシンバル+バスドラム、バスドラとスネアの組み合わせを想像すると良い。グルーヴを出しやすい方法だが、ソロイストとのインタラクトは難しい。また色彩豊かなコードは弾きにくくなる。アップテンポの時に便利。
【ウォーキングベース+コード】
ウォーキングベースを弾きながら時々コードも弾くアプローチ。完全なグルーヴと明確なハーモニーがあり、ミディアム・スウィングで便利。テンポが上がると難しくなる。ノリは良いものの、インタラクトする余地はほとんどなく、ハーモニーの工夫もしづらい。
【フレディ・グリーン】
4つ切り。グルーヴとハーモニーはクリアに出しやすい。強力なパルスを出せる。弱点はインタラクトする余地が少ないこと。また特定ジャンルの印象が強く、このアプローチが合わない曲もある(Mr.P.C.やInner Urgeには合わないだろう、と語っています)。
【ハーモナイズド・ベースライン】
ジム・ホールがビル・エヴァンスとのデュオ”Undercurrent”(のMy Funny Valentine)で駆使した有名なアプローチ。ハーモナイズされたクロマティック・アプローチを多用するベースラインは、ベーシストが弾くタイプのベースラインとは違う面白い雰囲気。明確なグルーブを出しやすい。一方インタラクトは難しく、忙しい印象。
最終的にはこれらのアプローチを適切に組み合わせて様々なテクスチュアを生み出し、リスナーが飽きないようにしてはどうか、とLarsen氏。わかりやすく参考になる動画でした。
ここでジョン・アバークロンビーとジョン・スコフィールドのデュオ演奏を聴いてみます。アルバム”Solar”の1曲目。
2人同時ソロの後、まずジョンスコ氏がソロでコンピングはアバークロンビー氏。点描的なベースラインで始まり、「ウォーキングベース+コード」と「2レイヤー・コンピング」を織り交ぜて使っています。ウォーキンベース時のコードは伸びている音がたくさんあって魅力的。「2レイヤー・コンピング」はポリリズムとの組み合わせでリズミックなテンションが出ています。
ジョンスコ氏も点描的なベースライン、「ウォーキングベース+コード」の他、途中で4つ切り的なこともやっています。「普通のコンピング」も出てきます。 さらにはジム・ホール的なハーモナイズド・ベースラインに近い奏法も出ていて、かなりテクスチュアが豊かだなと思いました。意外ですが、ジョンスコ氏は1日何時間も4つ切りだけひたすら練習した時期があったと聞いたことがあります。だからこんな演奏ができるのか…
この2人の演奏、どちらも伴奏上手で、Jens Larsen氏が解説しているアプローチも全部入っていてなかなか勉強になります。
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