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2音でもスケール

もう三ヶ月前(あっという間だなぁ…)、メアリー・ハルヴォーソンというギタリストに夢中になっていくつか記事を書いたのですが(今でも夢中!)、下の記事中で紹介した動画で彼女は増4度(トライトーン、augmented 4th, diminished 5th)や短6度の練習について語っていました。

自由表現を探求する素敵なお姉さんメアリー・ハルヴォーソン氏が下の動画でインターバル練習を紹介しています。トライトーン(増4度)を4度サイクル...

動画の冒頭で、氏がこんなことを言っていたのがなんとなくずっと頭の中に残っていて、時々考えていたのでした。

So in this exercise each interval becomes essentially its own mode so I’m going to take the tritone as an example…

このエクササイズでは、各々のインターバルが本質的にそれ自身のモードとなります、これからトライトーンを例として説明します…

本質的にそれ自身のモード…だと…? 旋法、つまりスケール…? 増4度が… ということで、考えてみたのですが、2音だからといってスケール、旋法であっていけない理由はないんですよね。多分。

C-F#のトライトーン・スケールなら、根本形と第1転回形がある。第1転回形はF#-C。そしてトライトーン・スケールは6つのキーにのみ「移調が限られた旋法」。1オクターブを均等に2分割する、シンメトリカル・スケールの1種。ホールトーンやコンディミやシンメトリック・オーグメントの仲間。

ニコラス・スロニムスキーの本の冒頭で詳細に説明されているように、そのトライトーンのあいだに何個かの音を入れると新しいスケールになる。また、それはフランスの現代音楽作曲家オリヴィエ・メシアンが定義した「移調の限られた旋法」第4〜第7旋法にちょっと似たものになったりする。

音数の少ないスケールというとすぐに思い浮かべるのはペンタトニックで、これは5音。4音はどうだろう。1オクターブを均等に4分割するディミィニッシュ・セブンスは、アルペジオと呼ばれることはあるけれどスケールと呼ばれることはない。組み合わせでコンディミと呼ばれることはあっても。

同様に、C-E-G#をオーグメント・スケールと呼ぶ人はいない。だからトライトーンを「トライトーン・スケール」と呼ぶのも少しヘンなのかもしれないけれど、別に2音でも3音でもスケールであっていけないわけはないよなぁ、と思ったりもします。

世界中で、「自然発生的に」生まれてきた音階で、最も音数が少ないのがペンタトニックだと聞いたことがあります。これは正確なことはわからないし、日本のヨナ抜き音階と西欧・東欧・アフリカのペンタトニックではそもそもピッチが同じであった保証はないので、単純化して考えるのは危険なのですが、何故4音以下の音階、スケールが歴史的にその存在を認められてこなかった(らしい)のか、不思議です。

F#-C。フィス、ツェー。この2音だけだと、「歌」にするには足りなかったのかな。でもメアリー・ハルヴォーソンの演奏を聴くと、これだけでもかなりリッチな表現ができそうだな、と思わされます。2音スケール。旋法としてのトライトーン。

Nicolas Slonimsky
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