フリー系の(などと書くとフリー系でないギタリストは自由ではないのか!と思ってしまいますが)ギタリスト、メアリー・ハルヴォーソン。彼女はむかし、学校で学んだスタイルでジャズ・スタンダードを演奏する時と、よりフリーな状況での演奏をする時との乖離(schism, split)がひどく、ちょっともやもやしていた時期があるそうです。そしてその2つを結びつけようとすると、大抵失敗していたらしい。
彼女は同じ内容をPremier Guitarのインタビューでも語っていて、その頃の記憶は彼女にとって重要なものだったことが伺えます。そしてある日、伝統的なジャズ・スタンダードの素材を、自由に使ってみればいいじゃないか、と思った瞬間が、彼女を訪れた(”click”体験。これだ!という体験)。
何年か前、ニューヨークのギタリスト、メアリー・ハルヴォーソンは自分の演奏に分裂を感じていた。ジャズ・スタンダードを演奏する自分なりのアプローチは身につけていたが、フリー・インプロビゼーションでは全く別の様々な演奏戦略を持っていた。これが彼女にとって居心地が悪かった。
しかしある日、レストランでジャズ・スタンダードを演奏するギグを3セットこなした直後、ハルヴォーソンは(フリー)インプロビゼーションのギグに赴いたのだが、その時彼女の頭の中にはジャズのハーモニック・メロディック言語がまだ強く残っていた。彼女はこれを通常の制限の外側に出して使い、不思議な効果を得たのだった。
動画では、スタンダード曲でのコード進行やメロディを取り出し、スタンダード演奏で使用するスケールやアルペジオを取り出して、通常の順番とは違う感じでカット・アンド・ペーストするように使っていることなどを説明しています。最後のコード・メロディはそういう演奏の例。これ、3分の動画だけど個人レッスンみたいな内容ですごいなぁ…
いやぁ、これは面白かったです。普通ここまでパーソナルな体験を教えてくれません。素敵なギタリストですね。うまくサウンドしないこともあるから、失敗を恐れずに実験しましょう、とも言っています。
彼女はサウンドも、曲も、演奏もカッコよく本当に好きで、最近ハマっています。フリー系といっても、最終的に彼女はギターが好きなギタリスト、という感じがします。ポール・モチアン・バンド以後の空間系サウンドに慣れた耳には、巨大なギルドのフルアコから聞こえてくるバキバキとした音がなんとも気持ち良いです。ちなみにいまアメリカで最も注目されているギタリストらしいです(Downbeat誌で確か新人ギタリスト・コンポーザー部門で1位になっていました)。