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この話には続きがあるんだよ、という感じのソロを目指して

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先日ギター仲間と居酒屋で飲んでいる時、衝撃的な話を聞かされました。

その彼、普段ジャズという音楽をほとんど聴かない知人女性をライブに誘ったのだそうです。そのライブは勿論プロのジャズミュージシャン達によるものだったのですが、残念ながらその女性はあまり感銘を受けなかったそうです。

今日の演奏はどうでした? と友人が聞いたところ、その女性は「うーん、とてもきれいな曲、カッコ良い曲が多かったです。でも… 無知ですみません、ちょっとわからないことがあるんですけど、聞いてもいいですか?」と逆質問。

その質問内容は私達にとって驚愕のものでした。それは何か。

アドリブのところって、ないといけないんですか? 何のためにあるんですか? サックスの人のソロ、ピアノのソロ、ベースのソロ、ドラムのソロ、全部ないといけないんですか?

そう聞かれてさ、俺は白目をむいて泡を吹いて倒れそうになったよ、と友人。それを聞いた私はホッピー(黒)のグラスを持つ手がガクガクと震えだし、額から冷たい汗が流れ落ちてきました。

その女性曰く、ジャズ・スタンダードの曲は「きれいだったり、カッコ良かったり」して、好きなのだという。しかし「アドリブソロ」の存在意義が理解できないらしい。彼女はこう続けたそうだ。

きれいなメロディを演奏した後に、なんで自由に演奏する部分が必要なんですか。テーマ・メロディだけで終わったら、ダメなんですか? そのほうが短いし、退屈もしないと思います

「あの女はそう言った。そう言ったんだよ…」と虚ろな目をして呟く友人の姿が霞んでいく。俺は白目をむいて口から泡を吹き、鼻血を流しながらその場で意識を失って床に崩れ落ちた ーー

このエピソードには考えさせられました。その女性は、連れて行ってもらったライブで演奏されたスタンダード曲のテーマとソロとの間に関連性を聴き取らなかったのだと思います。もしかするとテーマとの関連性が希薄な、あるいは全くないようなタイプのソロを演奏するミュージシャンだったのかもしれません。

普段からジャズを聴いていて、練習していて、その形式に慣れ親しんでいる私達は、ともするとこのことをスルーしてしまうことがあるのではないか。

自分が弾くアドリブ・ソロに必然性はあるのか、という話です。コード進行が同じなら違う曲であってもソロがほとんど同じ、というのは、練習段階ではあってもおかしくないとして(というかそういう練習が必要な段階もあると思います)、音楽としてどうなのか。循環の曲なら全部同じようなソロでいいのか。

テーマと全く関係のないソロというのは、個人的にはやはり違うなという気がしています。勿論「関係なくてもいいだろ」という意見の人もいるかもしれず、他人の価値観は尊重しますが(実際そういうタイプの、どの曲でもソロが似通っているミュージシャンもいる)、自分はテーマと関係のあるソロを弾きたい。

というか、テーマと関係のないソロは弾きたくない。テーマと無関係な、ハーモニーの骨組みだけを利用して単に弾くだけならその女性が言うように、テーマだけ自分なりにいい感じで弾いて終わりにしてもいいんじゃないか、とさえ思います。私は「曲」を弾きたい。どこまでも「その曲」を弾きたい。

テーマが1つの「ストーリー」だとする。スタンダード曲は元々歌詞付きの歌だったものが多く、そもそもが何らかのストーリーやエピソードを内包しているもの。その「ストーリー=テーマ」を(自分なりに消化したかたちで)提示した後に、自分は何を弾けるのか。弾きたいのか。

あらためて考えてみると、「このストーリーは、ここで終わりではないんだ。実はまだ続きがあるんだよ。だから聴いてほしい。この話はこういうふうに続くんだ…」そんなふうに弾きたい、と私は思いました。

そういうふうに弾くためには、勿論「第1章」(テーマ)に登場した人物やエピソードを、色々と動かす必要がある。特徴的なインターバル、特徴的なリズミック・フィギュアをモチーフとして自在に動かせるようなスキルを身に付けておく必要がある。

有名なフレーズ、カッコいいリック、それらが登場するのは決して悪いことではないでしょう。でもそれは自分がストーリーを語るための素材として繰り出すものであって、それらの素材に支配されてしまってはいけない。もしそれらの素材に支配されてしまったら、次のような言葉を聞かされることになるのでしょう。

いまのアドリブ、なくても良かったように思うんですけど。

そんなふうに言われないような、必然性のあるソロ。こんな続きがあったのか! という驚きと快感を与えられるようなソロ。そういうソロを弾けるようにならないといけないんだよ、俺達は。

そうだな、まったくその通りだよ、と友人。

その夜、俺達の酒は苦かったーー


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