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ロングトーン練習をすれば10億円の宝くじが当たるだろうか

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2年ほど前に「音楽家と宗教」という記事を書きました。主にハービー・ハンコックと仏教の関係をめぐる雑感です(センシティブな話題であるせいか、ほとんど読まれなかった…)。

音楽家と宗教
ハービー・ハンコックとウェイン・ショーターが創価学会員であるというのは有名な話だと思いますが、以前から何がきっかけで入信したのだろうとぼんや...

ハービーが先日インスタグラムで下のような投稿をしていて、その記事を思い出したのでした。古い新聞記事の切り抜きでしょうか。「『南無妙法蓮華経』という詠唱は、日本語で原因と結果の神秘的な法則への帰依を意味する。私がこれを唱えはじめてから、レコードの売り上げは20倍に跳ね上がり、ついにあらゆることがうまく行きはじめた」と、ちょっとヤバそうなことが書かれています。

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いくらハービー様とはいえ、このノリにはまるで子供の頃読んでいた「マガジン」や「ジャンプ」の裏表紙の「このブレスレットを身に着けるようになってから学校の成績が上がり、ついにはなんと! かわいい彼女までできてしまいました!」的な怪しさを感じてしまいます。

実際インスタのコメント欄にも、「やっぱり仏教すごいよね!」という多数の書き込み以外にも、「レコードの売り上げのような実利的なもののためにお経を唱えるのは如何なものか」というコメントも見られます(個人的には実利で悪いことは何もないとは思います。幸福も実利のひとつでしょう)。

上の記事でも少し考察した『南無妙法蓮華経』ですが、これは一体何だろう、とあらためて思います。信じようが信じまいが、この「蓮華経」(Lotus Sutra)という「妙法」(Mystic Law)はすでにそこに存在しているものであって、それを唱えれば(Namo、帰依すれば)全てがうまくいくのだ、という思想。わかるような気もするのですが、完全には腑に落ちません。

下はハービー・ハンコックのピアノソロによる「ドルフィン・ダンス」です。お経を唱えることでこんな演奏ができるようになるなら何万回でも唱えますが、「学ぶ」ということは、たとえ偉人の教えであってもそれを鵜呑みにすることではなく、その意味を自分の頭と心で考え抜く、ということだと私は思っています。

では『南無妙法蓮華経』とは何だろう。あらためて考えてみるーーと、それはやはり管楽器の練習で言うところの「ロングトーン」に当たるものではないか、と思ったりします。演奏の練習以前に、ブー…ボー…という長い音を出す。ロングトーンの練習には色々な意味があるのだと思うのですが、音をよく聴くというのもあるはず。お経ってロングトーンのことじゃないのか。

ギターやピアノという楽器で管楽器のようなロングトーン練習をする人はあまりいないと思いますが、やはり面白いんじゃないか。やってみるといいことがあるんじゃないか、と思います。

音をポーンと弾く。その中の倍音に耳を澄ます。音が発生する物理法則は、それを信じようが信じまいが、確固としてそこに存在することを、人は経験上知っている。その音をあらためてポーンと発し、その法則を確認するという作業は、仏教徒がお経を唱えることとほぼ同じことではないか。

その時の「音」は「ロジックで理解」する必要がないところも似ています。

これから毎日、ギターで意識的にロングトーンの練習をしてみよう。果たして10億円の宝くじは当たるだろうか。異性にモテモテになるだろうか。いやそんなこと本当にどうでもいいのですが、音楽ともっともっと仲良くなれたらいいなぁ、と思います。


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