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ニア・フェルダーとデバイスに頼らない練習法

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ニア・フェルダーのMy Music Masterclass教則動画2本を何度も見ているのですが、本当に勉強になります。彼は一言で言うと「デバイス」と呼ばれるものに極力依存しない練習をしているように見えます。

device noun [ C ] (METHOD)
a method that is used to produce a particular effect.

device (名詞)
特定の効果を生み出すために用いられる方法論のこと

Cambridge Dictionaryより

世の中に存在する教則本や音楽学校の大部分はこの「デバイス」の提供を目的としています。学習者側も「デバイス」を期待してそれらを求め、門戸を叩く。ジャズっぽくするにはどうすれば良いですか!オルタードはいかが。ツーファイブをどうぞ。シンコペーションはどうですか。等々。便利デバイスが山ほどあります。

彼の練習法は、たとえば自分が弾けるものをより完璧に弾けるように汗を流そう、というマイク・モレノの態度(それが全てではないけれど)とはかなり違うのが面白いです。フェルダーの練習法を別の角度から見ると、「同じことをやらない」という制限がありそうです。

スケール練習にしても、1つのパスで弾けたら他のパスで弾く練習、ボックス・ポジションに縛られず(この「ポジション」にしても「スケールを弾きやすくするためのデバイス」と言える)とにかくインターバルで考えること。いつでも開始できていつでも終えられること。という感じで、とにかく「同じもの」に縛られないことを目指す練習。

彼独特のクロマティシズムにしても、ビバップで言うクロマティック・アプローチのようなパターン化された方法論、デバイスはない、と語っています。エンクロージャーとか、ダブル・クロマティックのような発想ではないんですね。コードトーンがあり、非コードトーンがある。その間を縫っていくだけだ、と。パターン化された便利メソッドはありません、と。

これは強力なテクニックがあってはじめて成立するのかな。それともこういう練習を続けてきたからこそあんなテクニックを持てたのか。卵が先か鶏が先か。12音と完全に均等に仲良くなっていないとあのクロマティシズムは生まれてこないはず。

その場での対応力、反射神経が鍛えられそうなとても良い練習方法で、同時にギターの指板を常に再発見していくところもあり、一粒で何度もおいしい効率の良いマルチレイヤーな練習法に見えます。でも難易度はすごく高いです(私には。これを読まれている皆さんには簡単なのかもしれない…)。

難易度は高いけれど、クリエイティビティとインスピレーションを存分に活用して「じゃあ音楽作ってみようぜ!(Let’s make some music)」と言う時の彼がまた楽しそうで、良い感じなのです。この人は練習と本番演奏の区別があまりないタイプの人だと思いました。

常に自分に難しい課題を与えて挑戦すること。1つの方法でクリアできたら他の方法で試してみる。毎回違うふうにやる。そのためのミクロな準備練習はまあかなり大変なのですが、あらかじめ誰かに便利な地図(デバイス)を与えられてそれを使うよりも、独自の音楽、結果に至るんだなあと感心させられます。

炊飯器にお米と水を入れてスイッチを入れれば、自動的においしいごはんが炊き上がるわけです。でもニア・フェルダーは米を炊くのに炊飯器を使わない人なんですね。喩えるとそんな感じかな。

誰にも似てないですよね、ニア・フェルダー。勿論マイク・モレノもベン・モンダーも他の誰にも似ていないのですが、ニアに比べると彼等さえ伝統的な奏法の中で音楽をやっていると感じます(奏法レベルの話。音楽的な結果は決して単純ではないと思います)。

ニア・フェルダー式の「デバイスに頼らない練習法」、ちょっとづつ日々の中で増やしていきたいと思っています。時間はかかるけれど良いことがたくさんありそうな気がします。焦らずにちょっとづつ、ギターの構造を楽しみつつ、理解しつつ。


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