むかしからよく日本におけるライブミュージックのチャージは高い、不当に高い!という意見を見聞きしてきました。たとえばマイク・スターンはアメリカでは15ドルで見られるのに、日本では6500円する、みたいな話です。これは本当なのか。今でもそうなのか。高いと言えるのか。真実に迫るべく、軽く数字を検証してみました。
印象ではなく実際の数字で
こういう問題は印象で語るより実際の数字に当たって考えたほうが良いはず。そんなわけで思いつくままに有名ジャズ系ライブ店のチャージを調べてみました。一律料金でないお店は有名ミュージシャンのライブから(2017年9月)チョイスしてみました。まず下の表をご覧ください。どうでしょう。日本円換算は本日のレート、111.9円で計算。
お店 | チャージ | 日本円換算 | 備考 |
Iridium Jazz Club | $25 / $35 | ¥2,799 / 3,920 | Oz Noyバンドの場合。早いステージのほうが安い |
55 bar | $10 | ¥1,119 | 一律料金。セット毎に要2ドリンク。アーリーショウ無料 |
Smalls | $20 | ¥2,240 | 1セットの料金。天使・魔法使い・聖人無料 |
Cornelia Street Cafe | $10 | ¥1,119 | ほぼ一律料金の模様。飲食要 $10以上 |
Bluenote NYC | $65 / $95 | ¥7,280 / 10,637 | COREA / GADD BANDの場合。$65はバー・$95はテーブル |
Bluenote Tokyo(日) | ¥12,800 | ¥12,800 | COREA / GADD BANDの場合。 |
Bluenote Mirano(伊) | 40€ | ¥5,353 | Richard Bona Mandekan Cubanoの場合 |
Bluenote Beijing(中) | 360-560元 | ¥6,114 – 9,511 | Jacob Collierの場合。席により異なる |
Sunset Sunside(仏) | 20-30€ | ¥2,676 – 4,014 | Seamus Blake, Marc Coplandのバンドで28€ |
確かに55 barやCorneliaの料金を見ると安いような気はします。出演しているのもマイク・スターンやベン・モンダーのような一流ミュージシャン。Smallsも確かに日本の感覚からすると安い。しかしBluenoteなどは日本と同じ程度の値段感なのかなと思います。
普段55 barやCornelia St.Cafeで演奏している大物ミュージシャンも、来日時には大体ブルーノート東京やコットンクラブなわけです。いつもとはなんとなく違う客層のお店に演奏しにきている感じですね。とはいえ、海外ミュージシャンのライブ料金が本国のそれより高くなるのは当然。電車ではなく飛行機でやってくるのですから。
今年6月にブルーノートで観たマリア・シュナイダー・オーケストラは税込み¥11,500。安いと思った、というか人数や交通費考えたらペイするのだろうか、と心配になったほどです。
上の表のいちばん下のSunset Sunsideはフランス・パリのライブハウスですが、Smallsよりちょっと高いくらい。日本だと新宿Pit Inn夜の部に近い値段設定のような気がします。アメリカ以外の外国でアメリカベースのミュージシャンが演奏する場合は大体こんな感じじゃないのかな、と思うのですがどうでしょう。
ところで国によって物価も違います。商品によっても全く違います。そこで参考までにマクドナルドのビッグマックが上の各国でいくらで売られているのかご紹介。本記事執筆時点のレートで計算してあります。でもこれもあまり当てにならないかもしれません。というのも、たとえば日本は世界の先進国の中でもダントツに外食の値段が安い国だったりします。
世界のビッグマック1個の値段($1=119円) | |
日本 | ¥380 |
アメリカ | ¥593 |
イタリア | ¥562 |
フランス | ¥548 |
中国 | ¥336 |
日本のライブミュージックチャージは不当に高いのか? 私の結論
今回色々なお店のライブミュージックチャージを調べてみて、日本のそれが不当に高いとまでは私は思いませんでした(この記事を書くまでは、日本は高いな、という印象は持っていました)。ただ、人が何かを高いと感じているとしたら、それは、外国ではもっと安いとかそういう理屈を越えて、「日本でのライブミュージック・エクスペリエンスに価格に見合うだけの価値を見い出せなかった」経験を重ねてきたからではないか。
私自身、こんなに素晴らしいライブなのに本当に3000円なんかでいいのか、1万円だってまた来たい、とか、2000円でももう絶対来ない、と思うことがあります。そう思う理由は、演奏の内容だったり、会場の居心地だったり、接客だったり、様々です。
もう10年以上も前から、日本は高い、という声を耳にするのですが、外国での料金はあまり関係ないのではないか、と思いました。高い、と思われている理由は、別のところにあるような気がします。