最初に聴いたジャズ・ボーカリストはカーメン・マクレエだったような気がします。その後エラ・フィッツジェラルド。大学のジャズ研に入ると、スタンダードを知るにはまずこれだ、と先輩からチェット・ベイカー・シングスを貸してもらいました。ジョン・コルトレーンとジョニー・ハートマン。ビル・エヴァンスとトニー・ベネット。どれも最高だったな…
考えてみると日本人ボーカルをあまり聴いてこなかったのですが、最近、気になっているギタリスト経由で興味を持ったボーカル・アルバムで特に感動した2作品について書いてみます。
ESSENCE / Akira Wada
和田明さんという新進気鋭のボーカリストさんのデビュー・アルバムで、今年の春にリリースされたばかりの作品です。私はギタリストの松原慶史さんのファンなので、その関係で和田氏に興味を持ちました。このアルバムでも松原氏が数曲で参加されていて、”Day By Day”はお2人のデュオ。”Skylark”や”The Shadow of Your Smile”、”But Not For Me”のような定番スタンダードが多く入っているのですが、ボーカルは勿論共演ミュージシャン達の演奏も素晴らしく、あと録音がかなり臨場感があって良いなーと感じます。私はミックスのこと良く知らないのですが、エンジニアさんがすごいのかな。
何はともあれ和田氏の歌。この安定した中域はなんだ!!ボーカルの表現をあらためて考えてみると、必然性のない音とか1個たりともあってはいけないわけで、しかも全部完全に歌われているものでないといけない。全てが徹底的に歌であり、歌のかたまりなのであります(俺は…何を言っているんだ…)。ギターはこんなふうに音を伸ばすことはできないけれども、この音の発し方、リリースの仕方に学ぶところは大きいです。歯切れの良い発音も参考になります。
Day Dreaming / Geila Zilkha
ジャズギター・ファンクギターどちらの世界でも有名な竹中俊二さんの音源を追っているうちにギラ・ジルカさんという女性ボーカリストに至りました。YouTubeにたくさん動画があり、観ているうちにアルバムが欲しくなってまず購入したのがこの”Day Dreaming”。これはものすごく完成度が高い。90年代頃(?)の懐かしいジャズ・フュージョンやファンクのテイストと、スイング・ジャズのテイストが混じり合ってなんとも都会的な雰囲気。”Love For Sale”や”Moonlight Serenade”のアレンジにはぶっ飛びました。
ギラ・ジルカ氏の、リッチな中域に乗った少しかすれた歌声がなんともカッコよく、長い音符では幽玄的な気持ちにさせられます。”Summertime”のスキャットも最高。竹中氏のギターは私が好きだったギタリストのおいしいところがたくさん継承されている感じで、聴いていてエリック・ゲイルとかハイラム・ブロックのような懐かしい人達の音楽が一緒に現れてくるような気がします。あとこのアルバムはどの曲もアレンジに工夫があって飽きません!!
どちらのアルバムもとにかく完成度が高くて、おすすめです。ホーンもそうなのですが、ボーカルを聴くとこの自在なサステイン、ロングトーンに圧倒されます。いいなあ、と。ギターで同じことはやれないとしても、この感覚は絶対に大事なはず。最近は他にもジャズギタリスト・シンガーのカミラ・メザや、ベン・モンダー経由でテオ・ブレックマンという歌手を知り、いろいろ聴いています。ボーカリストの表現に学ぶことは本当にたくさんありますね。
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