2017年4月29日、ブルーノート東京で小沼ようすけさんの”Jam Ka Deux”ツアー最終公演を観てきました。何と120分にも及ぶ陶酔のステージでした…!! 2月末にモーションブルー横浜で行われたU-Zhaanさんとのライブでも思ったのですが、最近の小沼さんは爆発的な進化の最中にいるのではないかと思わされます。
音楽がどんなに激しさを増しても、気持ちが昂ぶっても、その場にいる全員の身体が自然に踊り出してしまっても、小沼さんの右手には無駄な力が全く入っていないように見えました。そして終始、楽しそうな笑顔。こんなふうに笑顔で楽しそうに弾きまくるギタリストは他にパット・メセニーくらいしか知りません!
ジャズ・ギターの伝統も勿論感じられます。ジョージ・ベンソンやパット・マルティーノの最良のグルーヴの記憶の断片。でもジャズには縛られていない自由な音楽。最近ジュリアン・ラージが”Arclight”で「ジャズ以前のアメリカ音楽」に回帰してみせましたが、小沼さんも別のアプローチで「ジャズ以前の音楽」にアプローチしているように見えます。2人に共通点があるとしたら、より自由になりたいという欲求でしょうか。
最終日公演だけあって初っ端から息の合った気持ち良いグルーヴ。参加ミュージシャン全員すごかったのですが、特にピアノ・キーボードのグレゴリー・プリヴァの熱いプレイ、小沼さんとのインタラクションが最高。みんなもう楽しみまくってノリにノっていました。
以前もこのブログで紹介したのですが、小沼さんはこんな言葉を語られています。
即興演奏において自分らしさや今を感じ自然の流れと調和するにはどうしたらいいのか悩んでいた。10年前に出会ったサーフィンから得るものは、その悩みを少しずつ解決してくれる。僕にとってとても大事なもの。
ほんとサーフィンやってみようかなと思うくらいです。波は流れであって書かれた譜面ではない。押し寄せてくる波に一つとして同じものはない。だから、毎回その波にあった入り方をしなければならない。波は力でねじ伏せることはできない。自然体で波と調和することを目指すように、音楽することが大事なんだ…などと思ったりします。
基本的に日本在住で活躍されているのに常に普遍性のある音楽活動をされているように見えるのも、小沼さんの不思議なところです。そしてグアドループという小さいフランス領の島のリズムという、ある意味特殊なものを追求しているのに、それがやはり大きい普遍性を獲得して、あれだけ多くの聴衆の心を動かしているところ。この逆転現象が面白い。
小沼さんは、すごい音楽をやろうなどという気持ちは微塵も持っていないのではないかと思います。ただひたすら本人が波乗りを楽しむように音楽を楽しんでいる。それがあまりに楽しそうで気持ち良さそうに見えるので、みんなも観に来たくなってしまう。そういう感じのギタリストは、いま日本では小沼ようすけさんだけかもしれません。
書いていてなかなかキリがないので、続きはJazz Guitar Forumの小沼ようすけさんを語るスレッドに書き込みたいと思います。皆様のご感想も是非お待ちしております。
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