レコードなんかとっくの昔に処分した。CDも一度全て売り払った。今では全てデジタルデータ。iTunesで管理してiPhoneで持ち歩く。そんな自分に一体何が起きているのか。いま我が家ではLPレコードが増殖するというまさかの事態が発生しています。
きっかけはこのION Audio Archive LP レコードプレーヤー。以前からディスクユニオンや丸ビルのコンランショップで展示されているのを見て気になっていたのですが、持ち帰るには箱が大きすぎるので躊躇していました。先日amazonで見たら1000円ほど安かったこともあり購入。これが期待以上に面白いもので、最近ハマっています。
この写真は届いてすぐの状態。付属のスリップマットを外して撮っています。ACアダプターとUSBケーブルも付属。IONのプレイヤーには数種類あるのですが、私が購入したのはシンプルで一番安いArchive LPというモデル。ダストカバーさえない潔さが気に入りました。とりあえずレコードが聴ければそれで良い。反省も後悔もしていない。
このプレイヤー、USB経由でレコードをデジタル化できるようですがその機能、私は絶対使わないと思います。外部出力もあるのですがスピーカー内蔵です。しかも2発、ステレオです。33-1/3、45、78回転対応。スッキリしたデザインなのでそのへんにあっても邪魔に感じません。オールインワン、これ一台で音まで出るのが最高。
amazonのレビューには、音質が悪いとかターンテーブルが安定していないといった声が見られます。私感ですが、これは高音質とか高品質を求める製品ではないと思います。だって6800円ですよ。6800円のレコードプレーヤーを6.8万とか68万円のシステムと比較してはいけません。
値段を考えるとやはり頑張っていると思います。聴く時に、なるべくスピーカーが顔の下の近くに来るようにする。すると…
自分が最初に接した音響再生システムはこういう種類のものだった、と思い出したのでした。10歳の頃、家に小さいステレオがありました。その後、思春期にLed ZeppelinのとあるレコードをCDで買い直した時、何とも形容し難い違和感を覚えたのは今でも忘れません。こんなの、俺の好きなツェッペリンじゃない…と思ったのでした。
CDはクリアで清潔な音だったけれど、当時の自分にとってそれは音楽から魔法、チャームを消してしまうシステムでした。でも利便性を重視する大人になるつれ、CDを買うようになり、mp3で聴くようになった。簡単に音楽にアクセスできるようになった。そして音楽との付き合い方も、悪い意味で安易なものになりかけた時期もあった。
下はジョージ・ベンソンのブリージン。通して聴くのは10年ぶり以上のことです。A面、B面、黙って聴く。ジャケットを眺めて、そうそうセカンド・ギターはフィル・アップチャーチなんだよね、などと改めて思ったり。このアルバム、このIONレコードプレイヤーと相性が良かったです。CTI系のストリングスなんかすごく合います!
ハイレゾ音源とアナログ音源、どちらが良い音か、といった議論がありますが、優劣じゃないと思うんですよね。単にシステムが違うだけ。ダイナミックレンジだけ見ればハイレゾ録音のほうがレコードより広いので、録音時にも、再生時にも、より豊かな階調表現を実現できる可能性が残される。ではなぜこの時代に古いレコードを聴くのか。
多分こういうレコードたちをレコードとして聴いて気持ち良いのは、これが レコードという容器に格納することを想定して録音・ミックスダウンされたものだから ではないかと思います。こういうシステムで聴くことを前提として作られた。だからアナログレコードを何も考えずにCD化しました、というのは私にとっては最悪な音源。
というわけで、むかしレコードとして聴いていたもの、最初からCDで聴いたものなど、あらためてレコードで聴くのにハマッています。6800円のこんなオモチャみたいな製品でも、十分にレコードというメディアの魅力が伝わってきます。妙な圧縮感はないし、シンバルや金管楽器のブロウも柔らかい。
音が良いとかそういう話ではないんですよね。これは単に 違うもの なのだと思います。
6800円のレコードプレイヤー付属のなんちゃってスピーカーに、ダイナミックレンジが…みたいな話は滑稽。でもレコードとして世に出た音源であれば、この機械に載せて回すと確実に伝わってくるものがあります。こんなスピーカーなのに音像の定位具合もわかって面白いです。音源にもよりますが、立体的に感じることもあって驚きます。
このION Audio Archive LP、いまamazonでアナログレコードと一緒に買うと1500円OFFになるキャンペーンをやっているようです(2月28日まで)。アナログレコードストアのアナログレコードすべてが対象だそうです。すると実質5300円ですか。ちょっと信じられないような値段です。
最近レコード以外にカセットテープも再び注目されていたりするんですよね。レコード、カセット、CD、ハイレゾ音源…このあたりについては少し思うところがあるので、いつか記事を書いてみる予定です。あと、リスニング体験を見直すことはプレイにも確実に大きい影響を与える、とあらためて思いました。
売り上げランキング: 157